元阪神タイガースの岩田稔氏(現阪神CA)が、11月27日に大阪市内で自著『消えそうで消えないペン 1型糖尿病と共に生き、投げ切ったからこそ伝えたいこと』(ベースボール・マガジン社刊)の出版記念トークイベントに出演。後輩、藤浪晋太郎への思いも口にした。 特別な存在

自著『消えそうで消えないペン』の出版記念イベントに出演した岩田氏
引退後、今でも気になっている選手の一人に、藤浪晋太郎の名前を挙げた岩田氏。大阪桐蔭高校の後輩でもある藤浪は、やはり特別な存在だという。
自著『消えそうで消えないペン』では、藤浪について「誰もが認める圧倒的なポテンシャルの持ち主。1人の野球人として、見ているだけでワクワクする投手」と書き、藤浪が高卒新人1年目のキャンプの夜に初めて食事をして話したときの印象を、「受け答えがすごく落ち着いていました。かといって偉そうにするわけでもなく、当時はまるで同世代と話しているような錯覚にも陥りました」と綴った岩田氏。
野球に真面目な男
同書には、こんな話も紹介している。
「ここ数年、晋太郎がマウンドで苦しんでいる姿を数え切れないほど目にしてきました。突然ボールが抜け出して、修正しきれないまま四球が続く。毎日懸命にトレーニングしている姿を間近で見ているだけに、自分がサポートできることはないかと何度も策を練りました。結局は見守り続けることしかできなかったのですが……。晋太郎は押しも押されもせぬスター選手です。制球難が目立ち始めると、途端に各方面からアドバイスが飛んできます。そのうえ、毎日一緒に練習している高校の先輩からも意見を伝えられたら、それこそ大変だろうなと二の足を踏んだのです。今思い返せば、気がついたことはもっと遠慮なく伝えるべきだったのかもしれません。ただ、現役時代の僕はあえて普段通りに接することぐらいしか、彼を楽にしてあげられる方法を見つけられませんでした」
「晋太郎は僕より何倍も野球に真面目な男です」とも、岩田氏は書いている。
キャンプの夜に、初めて話をしたあの日から、まもなく10年。
これからも後輩へ熱い視線を注ぐという岩田氏。
その思いは、本人の胸にもしっかり届いているに違いない。
写真=BBM ©阪神タイガース 『消えそうで消えないペン』販売はコチラから