近鉄、オリックス、ヤクルトで活躍した野球評論家の坂口智隆さん。初の自著『逃げてもええねん』(ベースボール・マガジン社刊)が発売後たちまち重版となるなど、セカンドステージでも充実した活動を続けている。日々前向きにチャレンジを続ける坂口さんに、自分を成長させてくれる存在について聞いた。今回は、オリックス時代にともに外野を守った兄貴分、田口壮氏(現オリックス外野守備・走塁コーチ)から学んだこと。<4回連続の3回目> 投手を中心とした守りから入れるチーム

8月に三宮で自著のサイン会を行った坂口さん。控室では重版分の本にサインをしながら「かつて田口さんと自主トレをしたのが冬の神戸でした」と懐かしんだ
――坂口さんは2015年まで11年間、オリックスで活躍されました。当時ともに戦い、現在もチームで存在感を見せている方々がいますね。
坂口 投手なら、
平野佳寿さん、
比嘉幹貴さん……。今もずっと投げ続けている、凄い人たちです。凄い人とばっかりプレーさせてもらい、恵まれていました。
――今年のオリックスの強さを支えるのは……。
坂口 やはり投手力が一番。守りから入っていけるチームですよね。12球団トップクラスのピッチャーがいて、しっかり立ち上がりからゲームをつくれるので、守備のリズムから攻撃に移っていける。だから逆転勝ちも多いのかなと思うんですよね。締める場面はきっちり締められますし。今年に関しては野手陣が引っぱっていっている感じですけど、12球団屈指のピッチャーがいるなかで、攻撃へのリズムの転換がしやすいのかなという感じを受けます。
――現在、オリックスの投手コーチを務める
岸田護さんも、坂口さんが現役のときにチーム
メイトでした。
坂口 趣味の釣りでいつもお世話になっていました(笑)。
熱く賢い田口コーチ
――『逃げてもええねん』で、そのお人柄のすばらしさが書かれていましたね。同じように、田口壮コーチのエピソードも印象的でした。
坂口 田口さんも優れた人間性の持ち主です。僕がレギュラーを獲る前から、一緒に自主トレをさせていただき、かわいがってもらいました。当時田口さんはメジャー・リーガー。日本とアメリカを両方経験されていて、聞くこともたくさんありましたし、学ぶことしかなかったですね。「守備は芸術」とおっしゃっていて、教えてもらうというよりは、見て学べたと思います。まず自分が見て、わからないことは聞きに行く。その繰り返しでした。
――その後、オリックスで一緒に外野を守る機会もありましたね。
坂口 田口さんがレフトやライト、僕がセンターという形で守らせてもらうことが多くて、「センターってどうしたらいいですかね」と聞いたり、「どうしてこうしているんですか」と聞けたりしたことは大きかったです。それに対していつも明確に答えてくれました。
――無理をしない、逆の勇気を大切にしていたと本で書いている坂口さんですが、田口さんのプレースタイルと通じるものがあるのではないでしょうか。
坂口 学んだ気がします。無理する場面と、無理をしない場面。場面による守備位置の違いや打球の追い方など、よく聞きましたね。このランナーは意識したほうがいいのか、しなくていいのか、シチュエーションによる守備隊形を相談しながらやっていた覚えがあります。
――今シーズン、田口コーチはランナーの判定をめぐって審判に激しく意見したことがありました(8月2日、対
楽天戦、京セラドーム)。ファンからは、選手のために気持ちを前面に出す姿勢に好感が持てると支持する声が多かったと報道されました。
坂口 熱い気持ちが、もちろんある人です。でも普段は、優しい。面倒見がいいので、後輩がついていきたくなるんですね。本当に優しい方です。
――田口さんは、文章を書くのも得意で、やはり本を出されています。これも坂口さんとの共通点かと思いますが。
坂口 このインタビューの1回目と2回目でお話したつば九郎や
水口栄二コーチと同じく、田口さんも人をよく見ていて、視野が広い。引き出しの多さにもつながる、賢い人だと思います。普段、いろいろなことを考えているから、言葉で表現できるのかなと学ばせてもらっています。
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