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真夏の祭典いざ開幕! 第95回都市対抗野球大会

<CLOSE UP HUMAN>三菱重工West・北條史也 タテジマを身にまとい「打順は気にせず、場面によってのバッティングができたら」

 

ドラフト2位で入団した阪神では11年間プレー。人生節目の30歳を迎える2024年、戦いの舞台は変わり、短期決戦での活躍が求められる世界に足を踏み入れた。新たな働き場所で、持てる力を存分に発揮している。
文=小中翔太 写真=宮原和也、BBM

三菱重工West・北條史也


戦力アップだけでない加入がもたらしたもの


 元虎戦士が再び兵庫県のチームのタテジマのユニフォームに袖を通した。光星学院高(現八戸学院光星高)時代に主軸打者として3季連続甲子園決勝進出の偉業を成し遂げ、プロの世界でも11年プレーした北條史也が三菱重工Westに加入。勝負強い打撃でチームに貢献している。

 昨年オフに阪神から戦力外通告を受けると強打の内野手が補強ポイントだった三菱重工Westからオファーが届く。30歳のシーズンはアマチュア最高峰の舞台で戦うことを選び、1月8日の始動日からチームに合流した。

「いろいろなことを吸収して早くチームに溶け込んでいこうという気持ちでした。プロ1年目のときは周りも見れなかったし一番年下で必死でしたけど、今回はある程度周りも見れる。でも選手から見られてるなという視線は感じて最初はやってました」

 それもそのはず。チームには若い選手が多く、世代的に北條は甲子園のヒーローなのだ。エースの竹田祐(明大)は光星学院高が甲子園決勝進出を果たした2011、12年は小学6年と中学1年の年だった。「一番、甲子園を見ていた時期ですし、見にも行っていたので。北條さんのバッティングフォームをマネしてました。その人と野球できると聞いたときには楽しみでした」と目を輝かせた。

阪神では通算455試合出場。高校時代に名を上げた甲子園を本拠地に戦った


 大阪桐蔭高出身で入社1年目ながらマスクをかぶる石井雄也(関学大)にとっても、その背中から学ぶことは非常に多い。

「将来的にはプロを目指していますし、北條さんが入ってきてどういう練習をどういうレベルでやっているのか話をしてもらって、あの世界に行くにはあれだけやらないといけないなと刺激も受けますし、頑張ろうという気持ちも出てきます。(大阪)桐蔭と光星(学院)の試合を見て桐蔭のことを知りました。自分、阪神ファンなんで北條さんのことはずっと知っていて、その人がチームメートになって。このチームでも一番考えているんちゃうかと思うぐらいバッティングとかも考えて練習していて。こういう人でも戦力外になってしまうんだというのは衝撃的でしたね」

 北條の加入は単なる戦力アップにとどまらず意識の向上ももたらした。それは北條自身が取り組んだことの成果でもある。

「結果は出ないこともあるのでそれより野球に対する姿勢や練習の仕方、ケガもしてきましたしアップの大事さ、試合前の準備だったり細かい部分を怠らずにしようと。それをやって結果を出したら説得力もありますし、そういう思いでやってます。聞かれたらプロで経験したことを答えられたらいいなと思ってましたし、楽しんでやってます」。この姿勢に津野祐貴監督(日体大)も「ノック中もよく声も出してますしチームを鼓舞してくれてます。若い選手のお手本となるような練習の取り組みなど試合に対する準備を含めて模範のプレーヤーになってくれていると思います」と目を細めた。

 そしてもちろん結果も残す。実質的に本戦出場を決める一打を放ったのは北條のバットだった。

重みを感じながら自分の打撃を貫く


 都市対抗近畿地区二次予選、第3代表決定戦の日本製鉄瀬戸内戦の5回、1点を先制しなおも続く二死一、二塁のチャンスで右中間へ2点適時二塁打を放ち大きな追加点をたたき出した。「僕の前で左ピッチャーから右ピッチャーに代わってツーアウトだったので、僕が打てなかったら1対0で分からなかったんですけど、集中力を高めて必死にいった結果が良い結果になりました」。打球が抜けるのを確信すると思わず右手を突き上げながら走り出し、二塁ベース上で今度はベンチへ向かって両手でガッツポーズ。この一打でチームは勢いに乗り一挙6得点の猛攻で東京ドーム切符を勝ち取った。

二次予選では4試合で4打点、打率.364と結果を残した


 この活躍ぶりに津野監督は「どうしても追加点がノドから手が出るほど欲しい場面で打ってくれたのでさすがだなという感じで見ていました。(本戦では)大舞台でやりがいを感じてやると思いますし、チームの勝利を最優先に考えてプレーできる選手なので、勝利につながるような一打。走塁に関しても守備に関しても攻撃的にチームの勝利に貢献できるようなプレーを期待しています」。

 打順は春先が六番で、調子を上げた予選では三番を打った。補強選手を加えた新打線の中では攻撃的な二番を任されることが濃厚。社会人野球にとっての都市対抗は特別な意味を持ち、その重みを北條もヒシヒシと感じている。

「予選を戦ってみてやっぱりJABA大会とは違いましたし、1試合に懸ける集中力とかが全然違いました。疲れも1試合以上の疲れがありました。負けたら終わりという試合をやるのは久々なので楽しみな部分もあります。打順は気にせず自分のバッティングをして、場面によってのバッティングができたら良いなと思います。長打が一番良いですけど追い込まれたら粘ったりフォアボールを取ったりとかそういう部分を大事にしていきたいと思います。全部打てたら一番良いんですけどそんな簡単にいかないと思いますし、ここ一番とかで回ってきたら、そこでの1本が打てたらいいなと思います」

 プロ時代と同じ890グラムのバットを手に、新たな背番号23をつけて伝統の一戦の舞台であった東京ドームでの活躍を誓う。

PROFILE
ほうじょう・ふみや●1994年7月29日生まれ。大阪府出身。177cm80kg。右投右打。内野手。[甲]光星学院高-阪神13[2]〜23、三菱重工West(入社1年目)。

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