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真夏の祭典いざ開幕! 第95回都市対抗野球大会

<CLOSE UP TEAM>エイジェック(3年ぶり2回目 小山市・栃木市/北関東第1代表) 新風を吹かせる【前編】

 

強敵を撃破し、第1代表で東京ドームに帰ってくる。競争激しい環境で、チームは確かな力をつけてきた。前回出場時は初戦敗退。まずは1勝をつかみにいく。
取材・文=大平明 写真=福地和男、エイジェック野球部提供

主将・京橋幸多郎


 北関東大会(二次予選)を3連勝で勝ち上がり、本戦出場を初めての第1代表で決めたエイジェック。台風の目となったチームを率いるのは難波貴司監督(東海大)だ。

「創部7年目で選手の平均年齢が24.5歳という若さが売り。予選ではその若さという強みが出ました」

 オフシーズンは基礎体力を上げるトレーニングを重点的に行ってきたというが、それも都市対抗の予選をにらんでのものだった。「北関東大会は1週間という短い期間で3〜5試合を戦うスケジュールになっています。その厳しい予選で実力を発揮して戦い抜くためには肉体も精神も鍛えておく必要があるので、体幹を中心にトレーニングをしています」。

予選突破をにらんでチームづくりをしてきた指揮官。3年前につかめなかった初勝利をつかみにいく


 ただ、シーズンインしてからは順風満帆とはいかなかった。5月までのJABA大会は日立市長杯で3連敗を喫するなど予選リーグを突破することができず。オープン戦も企業チームには大きく負け越し、特に予選直前に行われた6試合は全敗した。それでも苦しい時期を乗り越えられた理由として、指揮官が名前を挙げたのが主将の京橋幸多郎(白鴎大)だ。

「1対1のコミュニケーションを大事にし、ささいなことでも話し掛けて関係性を作ることで、それぞれの選手がどんな気持ちで練習に取り組んでいるのかを感じ取っていました。また、相手から思いを伝えてきてくれることもあったので、その思いがチームのプラスになるように心掛けています。シーズンに入ってからはなかなか結果が出ず、かみ合わないときもありましたが『勝つために何ができるのか、矢印を自分に向けてやっていこう』と声を掛け、モチベーションを落とさずにチーム全員で戦うことを意識してきました」(京橋)

 また、チームをまとめるうえで佐藤靖剛(桐蔭横浜大)や楽天でプレーしていた内田靖人(常総学院高)といったベテランの力添えがあったことも明かす。

「新人に対して、練習のときから『そんな緩いプレーをしていたら勝てない。もっとこうしなきゃいけないんじゃないか』と声を掛けてくれました。そうした声が徐々に伝わっていったことが若い選手の活躍につながったと感じています」(京橋)

 北関東二次予選では片平吉信(城西大)と高岡佳将(上武大)のルーキーコンビが一、二番で起用されたが、難波監督も「新人らしからぬプレーでチームを引っ張ってくれました」とその働きを認めている。

打線は片平吉信がリードオフマンを務める


 片平や高岡をはじめ、エイジェックは今季、25人の新人選手を獲得。部員数は63人とかなりの大所帯となった。その狙いについて、指揮官は「日本一を目指す中で、経験が少ないことを埋める方法の一つとして人数を増やし、チーム内の競争を高めています。AチームとBチームの2チーム制を採っていて、昨年から2チーム同時にオープン戦ができるようになりました。競争面、実戦機会を積ませる以外にも異なるメニューを組むことで選手を適宜振り分けられるメリットもあれば、調子を落とした選手がBチームで調整することもできる。実際に河原井卓(獨協大)や宮脇大地(国学院大)は予選に合わせてAチームに戻ってきてくれました」とメリットを語っている。

 京橋主将も「Bチームの選手はギラギラしていて、うかうかしているとすぐに代えられてしまう危機感があります。自分も日立市長杯は途中からスタメンで出ることができなかったので、追いつき追い越せという気持ちがチーム力の向上につながっています」と効果を感じている。

 こうして迎えた北関東大会では初戦で茨城日産に3対1で勝利。「それぞれの選手が自分の役割を果たし、チームがカチッとはまった感じがしました」と京橋主将。すると、準決勝は河北将太(東洋大)が完投し、日立製作所に3対2で逆転サヨナラ勝ち。代表決定戦は金城乃亜(専大)が完投。SUBARUを4対1で下して東京ドームへの切符を手に入れた。第1代表に難波監督は「無敗で予選をクリアするのは簡単ではないですから驚いています。ただ、金城と河北が頑張ってくれて、投手陣が粘り、打線は少ないチャンスをモノにする。食らいついていく野球ができました」と振り返った。

投手陣は金城乃亜[写真]、河北将太の両右腕が軸


 もともとはプロ野球選手のセカンドキャリア支援がきっかけで野球に携わることになったエイジェック。現在は女子硬式野球部やBCリーグの栃木ゴールデンブレーブスを運営。社会人野球の世界でもチーム数が減少していく中、選手にプレーを続ける機会を与えたいという理念のもとに球団を立ち上げ。現在は栃木県小山市と栃木市を本拠地として活動し、地域貢献にも積極的だ。

「地元に愛されるチームを目指して、子どもたちに野球教室をしたり、お祭りに参加したり。今では地元の方から声を掛けられることも増え、3年前の都市対抗では地元から50台以上のバスに乗って応援に来てくれました」(難波監督)

し烈な競争を勝ち抜いたメンバーがグラウンドで躍動し二次予選を突破。チーム一丸、地元の応援を背に受けて本大会でも暴れる


 京橋主将も「地元から応援されている実感があるので本当に力になっています。勝てば一緒に喜んでくれるので都市対抗では1勝して結果で応えたい」と抱負を語る。

 難波監督も「まず1勝」と全国大会での初勝利を目標に掲げ、「新しい風を吹かせることができれば」と本大会でも旋風を起こすつもりだ。

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