
大山の代役として四番にも座る佐藤輝。ルーキーとは思えない雰囲気がある
セはTGの2強に
新型コロナウイルスの感染防止対策として東京、大阪、京都、兵庫の4都府県に発令されていた緊急事態宣言が5月31日まで延長されている。愛知、福岡にも発令が追加されたから、ほぼプロ野球の本拠地がある都市ばかりだ。
その中でもプロ野球は無観客、あるいは上限を決めて開催している最中だが、OBの私の立場からすれば中止、あるいは延期にしてもらいたいというのが本当のところだ。もうしばらくの我慢。どれだけ大変なことが起きているのか、もっとひどくなったらどうなるのか、その危機感があまりにも足りないと思う。
ただ一方で、各球団が緊急事態宣言下においても試合開催に踏み切る気持ちも分からないでもない。無観客では入場料はゼロだが、それでも放映権料などが入る。観客を5000人でも入れることができれば貴重な収入源になる。そうでもしなければ、あれほどの高給取りの選手たちをたくさん抱え、とても給料など払っていけないだろう。
昨年、今年と球団の経営は非常に苦しいはずだ。ここは選手諸君にもよく考えてもらいたい。「ファンあってのプロ野球」とよく言われるが、「球団あってのプロ野球」と言うのもまた事実。一生懸命プレーするのはプロなら当然として、高い年俸を手にしている選手たちはそれなりの自覚を持ち、行動を見せてもらいたいと思う。
こんな滅入る話ばかりをしていても仕方がないから、ペナントレースの話をしよう。開幕から30試合が過ぎて、どのチームもそろそろ戦い方が固まってきたころだ。まずはセ・リーグからだが、
阪神の調子がいい。投手陣がしっかりしているから安定した戦い方ができている。それでもやはり首位を走る大きな要因となっているのはルーキー
佐藤輝明の存在だ。33試合目で10本塁打は新人最速のようだが、佐藤の存在がチームにいい影響を与えているのは間違いない。本来なら四番の
大山悠輔がそういう立場になって然るべきだが、それだけ佐藤の力が抜けているとも言える。シーズンが終わってどれだけの成績を残しているか。とても楽しみだ。
巨人が少しもたもたしているのも阪神の首位につながっている。なかなか戦力が整わないようだが、それはどのチームも同じこと。巨人はやっぱり
岡本和真だ。
坂本勇人、
丸佳浩ではない。生え抜きの四番が打線を引っ張っていけるかどうか。岡本に元気がないと、なかなかチームの調子は上がっていかないだろう。
しばらくは阪神と巨人、この2チームが首位を争っていくと思われるが、意外と健闘しているのが
ヤクルトだ。ここは四番に座る
村上宗隆がどっしり構えている。
山田哲人の調子も上がってきて、2人が好調だから打線がつながっている。苦しい投手陣を今後も打線が援護していけばチャンスはあるだろう。ただ、ヤクルトは昨年も序盤は調子がよかったのだ。先は長い。チームの体力という面を考えると不安があるが、そこは
高津臣吾監督も考えているはずだ。昨年は終わってみれば最下位。同じ過ちを繰り返してほしくない。阪神、巨人に食らいついていってもらいたいし、今年はCS(クライマックスシリーズ)もある。
中日と
広島は残念ながら優勝争いができるだけの体力はなさそうだ。阪神、巨人と比べると選手層が薄く、それが今の成績につながっている。
DeNAは開幕直後よりもチーム状態は上がってきたが、それでもここからV争いまで浮上できるかと言えば厳しい。開幕から
ネフタリ・ソトや
オースティンらの助っ人がそろっていればと
三浦大輔監督に同情する声も多いようだが、私に言わせれば同情の余地なしだ。それは初めから分かっていたこと。であれば指揮官たるもの、二の手、三の手を考えて手を打っていくのが仕事だ。「仕方がない」とは口が裂けても言えない。そもそもプロの世界では周囲から同情されるようではおしまいなのだ。ここからどれだけ巻き返し、CS争いまで参戦できるかが勝負だ。
混パから抜け出すのは
セ・リーグに比べて混戦となっているのが、パ・リーグ。
オリックス、
日本ハムの調子が上向いてきたことも大きいが、それ以上に開幕前は高評価だった
楽天、
ソフトバンクが思った以上に勝ち切れていないのが混パの要因になっている。現時点(5月13日)では楽天が首位に立っているが、しばらくはダンゴ状態が続くかもしれない。ファンからすればそのほうが面白いとは思うが、それでもやはり徐々に楽天、ソフトバンクが抜け出していくのではないか。楽天は強力な先発陣がそろっているから大きく順位を落とすことはないはずだ。
石井一久監督が1年目ということで采配面の不安もあったが、コーチ陣の声を聞きながらうまくやっているようだ。またソフトバンクも毎度のように故障者が出るものの、それを補うだけの層の厚さがある。二の手、三の手を繰り出せるから、ここも大崩れすることはない。
カギを握るのは
西武ではないか。その中でも
山川穂高、
森友哉をキーマンに指名する。2人が打ちまくるようなら優勝も近づくが、そろって不振となればCS争いも難しい。故障で戦線離脱などもってのほかだ。頑張ってもらいたいのは
ロッテ。開幕5連敗と最悪のスタートとなったが、すぐにその借金を返した。全員野球で勢いがつけば、どんどんと加速していくチーム。
佐々木朗希という秘密兵器もある。
日本ハムは多くの選手が新型コロナウイルスに感染し、試合中止にもなる中で大変だったとは思うが、DeNAと同様、私は同情などしない。感染した選手を責めるつもりはない。最大の注意を払っても絶対に感染しないとは言えないからだ。その中でもチームがどう戦っていくか。それを考えるのが指揮官であり、プロの集団だ。苦しい中からよく上がってきたと思うが、勝負はここからだ。オリックスには毎度同じことを言っている気がするが、投打にタイトルを獲得できるような選手がたくさんいるから、あとは選手がどこまで辛抱強く戦っていくことができるか。オリックスが元気だと混パはますます面白くなる。
PROFILE 張本勲/はりもと・いさお●1940年6月19日生まれ。広島県出身。左投左打。広島・松本商高から大阪・浪華商高を経て59年に東映(のち日拓、日本ハム)へ入団して新人王に。61年に首位打者に輝き、以降も広角に打ち分けるスプレー打法で安打を量産。長打力と俊足を兼ね備えた安打製造機として7度の首位打者に輝く。76年に巨人へ移籍して
長嶋茂雄監督の初優勝に貢献。80年にロッテへ移籍し、翌81年限りで引退。通算3085安打をはじめ数々の史上最多記録を打ち立てた。90年野球殿堂入り。現役時代の通算成績は2752試合、3085安打、504本塁打、1676打点、319盗塁、打率.319。