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“一打無敵”のご意見番が球界を斬る 張本勲の喝!!

張本勲コラム「野球人口が減っているのは野球の危機だ。大人は子どもたちに野球の魅力、面白さを伝える環境づくりを怠らないでもらいたい」

 

野球人口の減少は大きな問題だ。子どもが野球と触れ合える機会を多くつくりたい[写真=桜井ひとし]


裾野を広げる


 日中は高校野球、夜はプロ野球と、最近はテレビの前で野球観戦の日々だ。本誌が発売されるときには夏の甲子園も終わっているころかもしれないが、やはり高校野球はプロ野球とまた違った魅力がある。負けたら終わりの一発トーナメント。特に3年生は最後の夏、ひたむきに戦っている姿は見ていて気持ちがいい。

 今の暑さは昔と比べものにならないから、選手たちも大変だと思う。各自で体調管理などは徹底しているだろうし、大会側もクーリングタイム(5回終了時に10分間の休憩)を導入するなどして対応している。もう根性や気合で暑さを乗り切る時代ではないのだろう。そうは言っても練習は必要であり、楽してレベルアップなどありえない。野球はチームスポーツだから規律も必要だ。練習こそ上達の近道であることには今も昔も変わりはない。

 ただ、ここのところ野球人口が減少しているという話をよく耳にする。高校野球の人口も減少傾向にあり、紛れもない事実のようだ。そもそも子どもの人口自体が減っているのもあるとは思うが、これはプロ野球のOBとして寂しいし、少し心配している。3月のWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)で日本代表は決勝でアメリカを倒して世界一に輝き、あれほど日本中を熱狂させたのだから、野球人口も少しは増えているのかと思っていたが、そうではないようだ。

 プロ野球自体の人気は落ちていないし、盛り上がっていると思う。新型コロナウイルスの影響で何かと規制されていた数年前に比べれば、今は球場全体に以前のような風景が戻って来たようにも感じる。それこそWBCの影響もあるだろう。

「別に野球人口が減っても、プロ野球が盛り上がっていればいいじゃないですか」と言う人もいるかもしれないが、それは違うのだ。ピラミッドで考えると分かりやすいが、その競技の裾野が広がってこそ頂点は高くなり、レベルアップしていく。裾野が狭くなってしまえば、やがて頂点も同じ道をたどっていくことになるのだ。その頂点を支えるためにも大事なのは裾野の広がりなのだ。これは野球に限らず、どのスポーツにも言えることだ。

 野球人口が減っているのには多くの理由があるだろう。まずはスポーツの多様化だ。今はサッカーやテニス、水泳、卓球など、いろんなスポーツが普及している。それ自体は決して悪いことではないし、選択肢が増えたという点では子どもにとっては良いことだと思う。問題はそこからなぜ野球が選ばれなくなったかということだ。

 昔は子ども、特に男の子の遊びと言えば野球だった。野球というより、三角ベースだ。柔らかいボールを手で打ち、塁間を走り回っていた。私の子どものころの遊びの定番だったし、それを近所の原っぱでやっていた。しかし今は野球をするにも場所に事欠く。公園ではキャッチボールなどが禁止されたり、手軽に野球ができなくなった。野球に触れ合う機会が少なくなった分、やろうとする子どもが減るのは当然だ。

 選択肢はスポーツに限らず、スマホやゲームもある。これが昔の子どもとの大きな違いだろう。時代と言えばそれまでだが、昔と違って裕福になった分、そうした遊び方が出て来るのも当然かもしれない。

都市よりも地方で


 そのほかの理由として、練習が厳しい、丸刈りが嫌だ、お金がかかる、親の負担が大きい、などが挙げられているようだが、私には「練習が厳しい」という理由は少し納得しかねる部分がある。指導者の資質にも問題はあると思うが、ある程度の厳しさは必要だと思うからだ。優しく、楽しく、面白く、だけでは、ただの遊びと変わらない。やり始めはまだそれで良いとしても、ある程度のレベルまでいったら、それこそ厳しさの中で野球を学んでいってもらいたい。楽しければ良いという環境の下では、いくら練習してもレベルアップにはつながらないからだ。

 私が野球人口が減っている一番の理由は、大人たちにあると考える。子どもが野球を始めたくなるような環境をつくれていないからではないか。子どもに野球を始めてもらいたいと思うなら、まずはそのきっかけづくりをすることからだ。野球というスポーツに興味を持ってもらうことがスタートだ。

 そのために大きいのは野球教室などの開催だろう。現役選手たちはシーズン中は難しいだろうから、オフにならないとできないが、であれば元プロ野球選手たちの出番だ。プロ野球の本拠地があるような都市ではなく、地方などに出向いて野球教室を開いてもらいたい。それこそ村、町に行って、子どもたちに野球の魅力、楽しさを伝えてもらいたいと思うのだ。子どもたちは元プロ野球選手に会えたこと、教えてもらったことをきっと忘れないだろう。

 私も以前からそうしたお手伝いをさせてもらっている。一般財団法人自治総合センターは宝くじの社会貢献広報事業として、もう34年も子どもたちのために野球教室を開催している。これはなかなかできないことだ。プロ野球を簡単には見ることのできない地に行き、そこの子どもたちに練習や親善試合を通じて、野球の魅力を伝えている。私も時間が許す限り参加させていただいているが、いつも子どもたちの熱を感じるし、これが野球を始める、あるいは好きになるきっかけになってほしいと思いながら指導している。

 私が言うのも何だが、野球というスポーツはよくできている。打つ、投げる、走ると体全体を目一杯使うし、個人競技ではなく団体競技だ。自分一人の力だけでは勝てないから、チームとして勝つためにどうすればよいかを考える。仲間との交流があり、勝ったときは全員で喜びを分かち合える。そうした野球の魅力、面白さを、もっと子どもたちに伝えていかなければならない。それは大人たちの役目だ。野球人口が減っている、残念だ、仕方ないで済ませていては何も変わらない。

 プロ野球の人気にあぐらをかいていてはいけない。野球人口が減ってきているのは事実であり、関係者たちは野球の危機と考えるべきだ。

PROFILE
張本勲/はりもと・いさお●1940年6月19日生まれ。広島県出身。左投左打。広島・松本商高から大阪・浪華商高を経て59年に東映(のち日拓、日本ハム)へ入団して新人王に。61年に首位打者に輝き、以降も広角に打ち分けるスプレー打法で安打を量産。長打力と俊足を兼ね備えた安打製造機として7度の首位打者に輝く。76年に巨人へ移籍して長嶋茂雄監督の初優勝に貢献。80年にロッテへ移籍し、翌81年限りで引退。通算3085安打をはじめ数々の史上最多記録を打ち立てた。90年野球殿堂入り。現役時代の通算成績は2752試合、3085安打、504本塁打、1676打点、319盗塁、打率.319。
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球界きってのご意見番として活躍する野球評論家の張本勲氏が週刊ベースボールで忖度なしの喝を発信。球界の未来を考えた提言を展開する。

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