
星野仙一氏は野球の未来を考える上で、第一に子どもに目を向けていた[写真=BBM]
熱い気持ちが裏目 価値観の正当化
元日の夜、初夢を見た。
あまり夢を覚えているほうではないのだが、なぜか目が覚めたとき、ハッキリとその光景を思い出すことができた。めったに行かないカラオケスナックで隣に座っていたのは、星野仙一さんだった。
じつは昨年末、久しぶりにカラオケで歌を歌った。それもカラオケボックスではなく、カラオケができるバーのようなところで、歌うつもりなどなく入った店だった。ところが、あちこちのテーブルの若者が順番に歌って店中が盛り上がっている。これは、われわれも一曲は歌わねばという空気になって、アリスの『チャンピオン』を歌った。こちとらそれなりに声量もあって、音程を外すこともない。しかしそういう中途半端な歌い手がカラオケではもっとも盛り上がらないことも体験的によーく知っている。だから『♪ライラライラライラライララーイ~』の絶叫は盛り上がることもなく、トラウマがまたひとつ増えてしまった。
そんな心の傷が深かったから、初夢の舞台がカラオケだったのだろうか。しかも、そこに星野さんがいたということが不思議でならない。一緒に歌ったことがないばかりか、そもそも星野さんはお酒を呑まない。その星野さんが夢の中で「お前は変わらんなあ」とニコニコ笑いながら煙草を燻らせている。星野さんが夢に出てきた記憶もないし、最近は初夢という言葉を思い出したこともなかった。ただ、子どものころは初夢がけっこう意味のあるイベントで、元日の夜はどんな夢を見るのだろうと緊張して眠りについたものだった。そんな忘れかけていた記憶が蘇よみがえって、これはもしかしたら星野さんが何かを思い出せと言いたくて初夢に出てきたのではないかと思い至り、星野さんから託された過去の言葉を辿ってみることにした。
最初に思い当たったのは、2007年の年始に聞いた星野さんのこの言葉だった。
「野球をやりたいと思う子どもたちに今の大人がしてあげなきゃいけないことはひとつしかない。それは・・・
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