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石田雄太の閃球眼

石田雄太コラム「“サク越え”をプラスするワケは“オールスターの主役”にあり」

 

2007年、メジャーのオールスター・ゲームで“ランニングホームラン”を放ったイチローは、3打数3安打の活躍でMVPを手にした[写真=GettyImages]


盛り上げる術を熟知 千両役者の恒例の檄


 大谷翔平がメジャーのオールスター・ゲームでライトスタンドへホームランを打った。メジャーの記録を語る際、もはや“日本人初”の枕詞は必要ないと思うのだが、それでもなぜかそこにこだわるメディアは“日本人初”を連発する。

 しかも“日本人初のホームラン”ではなく、“日本人初のサク越えホームラン”とくるから手に負えない。ホームランはサク越えがほとんどなのに、いちいち“サク越え”を足さなければならないのは、言うまでもなく、メジャーのオールスターでイチローがランニングホームランを打っているからだ。

 2007年、イチローはいつものようにオールスター・ゲームの主役を務めていた。それは結果的にランニングホームランを含む3打数3安打でア・リーグに勝利をもたらし、MVPを獲得したからではない。マニー・ラミレス(レッドソックス)は、またもイチローを捕まえて「打つとき、どうしても顔が前に動いちゃうんだけど、どうしたらいいんだ」と相談を持ちかけてきた。アレックス・ロドリゲス(ヤンキース)はイチローに教えてもらったアップの方法について、「今もあれでいいのか」と確認にやって来た。

 さらに試合前、ア・リーグのクラブハウスで行われたチーム・ミーティングでディビッド・オルティス(レッドソックス)が言った。

「今年もイチローに話をさせろ!」

 当時のア・リーグで恒例となっていたイチローの檄──盛り上がる選手たちの輪の中心に向かってイチローがのっしのっしと歩く。

「ヘイ、みんな、よく聞けよ・・・

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石田雄太の閃球眼

石田雄太の閃球眼

ベースボールライター。1964年生まれ。名古屋市立菊里高等学校、青山学院大卒。NHKディレクターを経て独立。フリーランスの野球記者として綴った著書に『イチロー・インタビューズ激闘の軌跡2000-2019』『大谷翔平 野球翔年』『平成野球30年の30人』などがある。

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