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石田雄太の閃球眼

石田雄太コラム「データの価値観 数字に縛られる是非」

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『本能・感覚』と『数字・データ』の狭間で、もがいていた2005年のイチロー。それでも同年は206安打をマーク[写真=GettyImages]


出塁率を重視する流れ 抗った05年のイチロー


 アメリカへ向かう飛行機の中で久しぶりに映画『マネーボール』を見た。2011年に公開された作品だが、舞台は02年のMLBを描いている。その前年、01年のディビジョン・シリーズは東地区優勝のヤンキースとワイルドカードのアスレチックスが対戦した。01年といえばイチローがメジャーへ移籍した1年目で、この年のマリナーズはア・リーグ西地区で116勝という歴史的なシーズンを送っている。同じ西地区のアスレチックスはワイルドカードながら102勝をマーク、東で優勝しているヤンキースの95勝を大きく上回っていた。

 そんなアスレチックスがディビジョン・シリーズでヤンキースに敗れるところから映画は始まる。5試合制で2連勝したアスレチックスだが、ヤンキースに3連敗を喫してひっくり返されてしまったのだ。しかも、その直後のオフには生え抜きの主砲、ジェイソン・ジアンビがヤンキースへ、凄腕代理人、スコット・ボラスの戦略から01年だけアスレチックスに在籍したジョニー・デーモンがレッドソックスへ去っていく。ヤンキースのおよそ3分の1という低予算でのチーム編成を強いられていたアスレチックスに彼らを引き留める財力があろうはずがない。

 そこでアスレチックスのGM、ビリー・ビーンは、ジアンビとデーモンの穴を埋めるために新機軸を打ち出す。それが出塁率への着眼だ。今でこそ長打率と出塁率を足したOPSなどの指標が定着しているものの、これは22年前の話である。ヒットとフォアボールは出塁という点で同じ価値があるはずなのに、打率が低い選手は・・・

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石田雄太の閃球眼

ベースボールライター。1964年生まれ。名古屋市立菊里高等学校、青山学院大卒。NHKディレクターを経て独立。フリーランスの野球記者として綴った著書に『イチロー・インタビューズ激闘の軌跡2000-2019』『大谷翔平 野球翔年』『平成野球30年の30人』などがある。

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