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今に燃える球人魂

広島・矢野雅哉インタビュー 楽しい毎日の中で「結果を残すことが恩返し。2人でゴールデン・グラブを獲りたい」

 

必死に守って、必死に打って、必死に走る。一つひとつのプレーには、昨季までとは違った思いもにじむ。見る者を魅了する華麗でアクロバティックな好守備のように、リーグ優勝とともに自身の目標もつかみ“獲る”。
取材・構成=菅原梨恵 写真=井沢雄一郎、松村真行、桜井ひとし

守備だけではない。今季の矢野は攻守走すべてで存在感を見せる。打撃面はもちろん、守備面においても”変化”があるという


思ったことをすぐやる


 昨季も93試合に出場した。今季は8月18日現在(以下同)で98試合。だが、その“内容”は明らかに異なる。持ち前の守備力には磨きがかかり、自身初の規定打席に到達している打撃ではリーグトップの6三塁打をマークするなど、粘り強さに勝負強さも発揮。積極的な攻めで盗塁は同5位タイの9個だ。厳しい真夏の戦いにも「体力的には暑いからどうこうというのはまったくない」とグラウンドを駆け回る矢野雅哉の姿に、ファンは熱い声援を送っている。

――今季は開幕直後から遊撃手でスタメン出場を重ね、7月以降もチームを勝利に導く献身的なプレーを見せています。

矢野 いやなんかもう、本当に毎日、結果を残したいという思いで必死なので。1日1日、自分で区切りをつけて試合に入っている。今日はこういうふうにやろうというところが違ってくるので、そこはいい感じに来ているのかなと思います。

――状態が悪いときは切り替えが大事だと思いますが、いいときも1日1日、切り替えて臨んでいるのですか。

矢野 ワンチャンス、今年はそうなので。前日のいい・悪いは関係なしに“今日”という思い。自分の出番が来たら何とかしてやろうという思いでやっています。

――試合に出続ける中で、昨季とは違った充実感も抱いていることと思います。

矢野 去年は結構出ているなという感覚があったんですけど、今は1試合1試合、区切ってやっているので、たくさん出ているなという感じがあまりなくて。とりあえず目の前のことだけを考えてやっていて、気がついたら8月。早いなと感じますね。毎日が楽しい。それが生きがいになっています。

――どんなところに楽しさや生きがいを感じているのでしょうか。

矢野 今までは守備固めか代走で出ることが多くて、正直、自分がやりたいことや自分の野球観だったりを出せるところがあまりなくて。もっと自分だったらこうするという考えを持ってベンチで見ていました。それが今はスタメンで出て、自分で考えていろいろなことができる。本当に毎日が楽しいなと。

――昨季までベンチで見て思っていたことは、うまく体現できていますか。

矢野 ミスもたくさんありますが、やりたいことはやれているのかなと。シーズンの最初のころは、もっとできたなと思うこともあった。そんな思いをしたくなかったので、今は思ったことをどんどんプレーで表していこうという感じですね。

――しっかり成績としても残っています。矢野選手の中で要因はどこにあると?

矢野 はっきりとは自分でも分からないんですけど、試合に出た人にしか分からない感覚があると思っていて、そのときに思ったことをすぐやろうと。あとからやっておけばよかったなって思いたくない。打席でも自分の中で「これが狙い球」と決めたら、ブレることなく思い切って振っていく。それがハマっている感じなので、自分を信じようと。

――自分の考えを整理して狙い球を絞ったりするのは、どのタイミングで?

矢野 試合の中で変わることもあるんですけど、大体はその日の試合が終わったら、次の日の相手チームのデータを自分でずっと見て、状況をシミュレーションするんです。戦ったことのあるピッチャーだったら・・・

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