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オリックス・鈴木博志インタビュー ときに心の火を消して「簡単なポジションなんてない。だから──」

 

自分を見つめ直す絶好の機会となった。昨秋の現役ドラフトで中日から移籍し「発見ばかりですよ」と言う新天地で見つけた進むべき道。先発、イニングまたぎ、火消しとして、32試合登板と多彩な役割で奮闘した右腕だが、決して闘志がみなぎっていたわけではない。静かに、優しい口調のように、ときに心の火を消し、見えたものがある。
取材・構成=鶴田成秀 写真=宮原和也、BBM


意識と体を一致させて


 求めるものは明確も、すぐに体現できるほど容易なことではない。そんな中での移籍で活路を見いだした。新天地で見て感じ、聞いて学び、体に染み込ませていく。一度はつまずいたが、真っすぐの強さを取り戻す方法はシンプルだった。

──約1年前、現役ドラフトで加入後に「オリックスは良いピッチャーばかり。学びたい」と言っていましたが、得たものはあったのでしょうか。

鈴木 間近でボールを見たら、映像で見る以上にすごいなって思いましたよ。実際にキャッチボールをしてみても、えげつないボールを投げるなって。スピードだけではなくて、ボールがめちゃくちゃ強い。ビックリしました。

──刺激を受けたことも大きかった?

鈴木 いや、逆ですよ。やる気がなくなりました(笑)。だってケタ違いですから、ペータ(山下舜平大)も、宇田川(宇田川優希)も皆。だから良い意味で競わないというか、自分を一歩引いて見ることができたのかなって。真っすぐ勝負、純粋なスピードだけの勝負ではかなわないけど、違う部分なら勝負できるとも思ったんです。

──“違う部分”ですか。

鈴木 はい。そもそも、昨年までの(投球)スタイルから変えたいとも思っていたんです。昨年までは、ボールを動かしたりして、変化球で打たせて取る。ゴロを打たせるピッチャーだと思ってやっていた。でも、今年は……。強いボールで、しっかりゾーンに投げ込んでバッターと勝負する。その思いだったんです。気持ち的には180度変わって、彼らのボールを見て……。

──さらに気持ちに変化が?

鈴木 いや、もっと強く思えたんです。そもそも昨年の後半から思っていたこと。打たせて取るために、コントロールばっかり気にしていても、ダメだなって。これだと、すぐにプロ野球人生が終わるなって。後半戦では、実戦でも変え始めていたけど、まだまだ変え切れなくて。そんなタイミングで移籍が決まり、中嶋(中嶋聡)監督、中垣(中垣征一郎・巡回ヘッドコーチ)さんと出会ったのが大きかったんです。考え方やトレーニング法など、いろんなことを教えてもらいましたから。

──中嶋監督からは「高めをうまく使うこと」の助言があったそうですね。

鈴木 そうなんです。ハッとしました。今までなら「アウトローをしっかり狙って」とか、“低め”を意識してきましたし、そう声を掛けられることも多かった。もちろん大事なことなんですけど・・・

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