3年連続Bクラスから優勝争いへ――。今季躍進を見せるライオンズの象徴的な選手の一人だ。164cmと体は小さいが、あふれ出る気迫は人一倍。走攻守のすべてで全力プレーを体現し、チームに活気を与えている。背番号62のひたむきに努力する姿から目を離せない。 取材・構成=小林光男 写真=大泉謙也、兼村竜介 ※成績・情報は7月2日時点 出塁率.350が目標
キャリアハイ更新が視界に入ってきた。昨季は125試合で打率.234だったが、今季はここまで71試合で打率.279をマーク。出塁率はリーグ4位の.371を誇る。簡単にアウトにならないバッティング。粘り強く出塁を狙う姿勢は打線にいい流れを呼び込んでいる。 ――今季、自身で最も成長したと感じる点はどの部分ですか。
滝澤 やっぱりバッティングですね。今のところはいい感じです。
――4月末には打率1割台に落ち込むなど、開幕からしばらくは打撃で苦しんでいましたが。
滝澤 昨オフから重点的に筋力強化に取り組んできたのですが、春季キャンプでは飛距離などに手応えがありました。そのまま実戦に入って長打や打球速度を意識し過ぎて自分のバッティングができなくなってしまったんです。もちろん飛距離が出るに越したことはないんですけど、もともと今年は出塁率.350を目標にしていたので、それよりも相手が嫌がる打席を増やすことに考えを変えました。
――0ストライク時の打率は.412とファーストストライクを確実にとらえているように感じます。
滝澤 バッターによると思いますが、僕のようなタイプがカウント0-0から打ちにいってポップフライに倒れてしまうと「何をしているんだ!」という感じになってしまう。二番や九番に入ることが多く、役割として次につながないといけない打順ですから。昨年から仁志(
仁志敏久)コーチに「今のままでは確率が悪過ぎる。もっと確率を上げなさい」と言われたことが大きいです。その点を改善するために打撃練習から気持ち良く打つのではなく、高い確率でライナーを飛ばすことを意識しました。練習でできなければ、試合でできるわけがありませんから。そういったことも実を結びつつあるのだと思います。
――より集中力が増したり、しっかり事前の準備をしたりしていることも好調な打撃として表れていますか。
滝澤 昨年からですが、相手投手の特徴をスコアラーに聞いています。僕に対する初球の入り方、1ボール後の攻め方など、頭の中を整理して打席に立てているので“ここ”というのを決め、ミスを恐れず、迷いなくバットを振れていますね。
――2ストライクとなって簡単に凡退せずに、粘って四球をもぎ取る打席も目立ちます。
滝澤 もちろん、追い込まれたら意識は変わります。でも、どちらかと言うと四球を狙っているというよりは、球数を投げさせて、次の打者につなげることを意識しています。追い込まれても甘いボールはヒットを打ちにいきますしね。その結果、最後にたまたまボールを見極めることができて四球を選べているという感じです。

粘り強いバッティングは滝澤の真骨頂だ
――今年は打線全体が好調です。それも好影響を及ぼしていますか。
滝澤 周りが打ってくれるので流れに乗っていけます。そのおかげで迷いなくバットを振れますし、感謝しています。
■ボールカウント別打撃成績 大事にしたい言語化
滝澤にとってメンターと呼べるのは源田壮亮だ。遊撃でゴールデン・グラブ賞を7度受賞し、日本代表の経験も豊富な大先輩。プロ1年目を終えた2022年オフから25年オフまで4年連続で自主トレをともに行い、さまざまな教えを受けたことが成長の糧になっている。 ――精神面で成長を感じるところはありますか。
滝澤 どんな形でも結果を出せば生き残ることができると思っているんですけど、打てなかったときの切り替えも重要です。昨年まではダメだったほうに気持ちが引きずられていて。でも、今年はアウトになったけど、この打席は自分の中で納得のいく打席だったとプラスに捉えることができるようになりました。
――なるほど。
滝澤 そういえば4月末の
日本ハム戦(ベルーナ)で
伊藤大海さんと対戦したとき、打ち取られたんですけど自分の納得のいくスイングができたんです。それまでにない感覚で打てたので、そこからだんだん状態が上がっていきましたね。自分の中で気持ちが楽になりました。
――考え方が変化したきっかけは?
滝澤 源田(源田壮亮)さんです。例えば源田さんはヒットを打つ、打たない、エラーをした、しないは関係なく、常にベンチで声を出しています。その姿を見てカッコいいなと思いました。「ワンプレー、ワンプレーで気持ちを変えているのは違う。今日がダメでも、明日がある」といったことも言われて、精神面が変わってきたと思います。
――源田選手からは言語化の重要性も説かれているそうですね。
滝澤 自主トレを一緒にやらせてもらって、野球教室も行うんですけど、相手に伝えたい内容をうまく言葉にできなくて。どうしても、言葉より「こうして」とか「ああして」という表現になってしまう。それでは源田さんに「全然内容がない」と言われて(笑)。やっぱり、感覚だけではダメで、自分のプレーを自分の言葉でしっかり説明できないと成長はしていかないですから。
――言語化のために取り組んでいることはありますか。
滝澤 プレーに対してどういう意識だったかということを、心の中で独り言のように振り返っています。まだまだできていないですけど、言語化は大事にしたいと思います。
周囲が驚くプレー
“令和の牛若丸”と称される軽快な内野守備は絶品だ。複数ポジションを守るが、どのポジションでも安定して打球をさばく。今季チーム防御率は2.66と12球団でNo.1の数字をたたき出しているが、滝澤の守備が何度も投手を救っている。守り勝つ野球が根底にあるチームにとって、欠かせない存在だ。 ――今年も二塁、三塁、遊撃と内野の複数ポジションを守っています。
滝澤 もちろん、シーズン通して一つのポジションを守り抜きたい気持ちはありますけど、今年は出だしが悪過ぎましたし、まだまだそのような選手ではないので。とにかく打つほうで結果を残して、まずは試合に出続けられるようにと思ってプレーしています。当然いろいろなポジションを守るとなると準備や動きも全然違うので、想像以上に難しい。だからこそ、いつかは一つのポジションを守り抜きたい気持ちはあります。
――例えば二塁を守ることが遊撃守備に、遊撃を守ることが二塁守備に生きることは?
滝澤 まったくないですね。別物だと思います。ただ、ゲッツーなどコンビでやるプレーに関しては、送球で相手が捕りやすい位置などは分かります。
――守備において練習からいろいろな打球を捕って引き出しを増やしているそうですね。
滝澤 プロの速く、強い打球に対応するのは、反射的に出るプレーがほとんどだと思います。それは練習でできないと出ない。なので、練習から球際を大事にしたり、基本どおり丁寧にアウトを取ったりとか、自分の中で意識を変えて、いろいろなバリエーションで捕って、引き出しを増やすようにしています。

主に二塁、遊撃を守るが球際に強いフィールディングで投手を助ける
――守備で伸ばしたい点はありますか。
滝澤 エラーをしないのは大前提ですけど、やっぱり自分にしかできないプレーを見せたい気持ちは強いです。体が小さいからこそ小回りが利いて、ヒット性の当たりをアウトにして投手を助ける。「その打球を捕るのか!」と周囲が驚くようなプレーをこれからも目指して、頑張っていきたいです。
――今年、自分にしかできないプレーはありましたか。
滝澤 二塁を守っていて
ポランコの後方へのフライを背走して捕ったプレーですかね(4月12日
ロッテ戦10回表=ベルーナ)。どん詰まりの当たりだったんですけど、すごくスライスしたというか打球が曲がってきたので、とっさに体を切り返してダイビングして捕ることができました。もしかしたら、ほかの選手だったら予測して簡単に捕れたのかもしれませんが、体が小さいからこそ、体を切り返せてアウトにすることができたプレーだったと思います。
――今年
広島に入団して滝澤選手から球界最小兵の座を奪った
勝田成選手と交流戦で顔を合わせていましたね。
滝澤 「どっちのほうが大きい?」という話をしましたが1cm差(滝澤164cm、勝田163cm)なので、そんなに変わらないです(笑)。
――プロで経験を重ね体のサイズでハンディを感じることはないですか。
滝澤 野球においてはこの体で良かったと思っています。体が大きいに越したことはないですけど、自分なりの役割があると思うので。小さくてもプロで活躍できるところは見せたいですし、この体が長所だなと思っています。
――シーズンも折り返し地点を過ぎましたが、V奪回のためにも今後貫いていきたいことは?
滝澤 ワンプレーごとに気持ちを左右されないことを、これからも大事にしていきたいですね。
PROFILE たきざわ・なつお●2003年8月13日生まれ。新潟県出身。164cm65kg。右投左打。関根学園高から22年育成ドラフト2位で西武に入団。1年目の5月上旬に支配下登録され、高卒の育成入団新人では初となるデビュー戦で初安打をマーク。4年目の昨季は初めて100試合出場超えを果たし、オールスターゲームにも出場。二塁、遊撃を中心に高レベルの内野守備でも注目を集める。今季は初の規定打席到達、出塁率.350を目指す。
インタビュー後記
優しい顔つきとは裏腹に、心には強い負けん気を秘めている。今年でプロ5年目。大学を卒業した同学年がプロ入りするタイミングを迎えたが、その話題を振ると「僕は高卒でプロに入りましたが、大卒でプロになる選手より絶対に活躍すると心に誓っていました」ときっぱり言い切った。今季のライオンズにはドラフト1位・
小島大河選手、同2位・
岩城颯空投手と大卒ルーキーが加わったが、「一番活躍したい気持ちはあります」と闘志を燃やす。その強い向上心こそが、小さな大選手たる所以なのだろう。(MK)