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BIGHOPE 光る新鋭

ヤクルト・木澤尚文 大胆に攻める「捕手の構えたところに行くのが必ずしも正解ではない」

 

新しい武器を手にしたドライチ右腕は、2年目で一軍初登板を果たすと、その豪腕ぶりをいかんなく発揮。堂々としたマウンドさばきで強打者に正面から立ち向かう姿は、チームにさらなる勢いをもたらす。浮かび上がった課題を克服すれば、信頼は揺るぎないものになるはずだ。
取材・構成=小林篤 写真=佐藤真一、川口洋邦、BBM


この世界で生きていくために


 2021年、チームが日本一の歓喜に沸く中で、木澤尚文は一軍のマウンドに立つことはできず、ファームでは22試合に登板し防御率6.07。プロの壁に当たっていた。しかし、今では鉄壁リリーフ陣の一人として、首位を走るチームを支える存在になっている。

──開幕から約2カ月がたちましたが、心身ともに状態は問題ないですか。

木澤 だんだんとシーズンの中での準備の仕方であったり、登板に合わせたマインドセットというところの要領がつかめてきたので、ストレスなく毎日を過ごすことができています。

──ここまで安定した成績を残していますが、キャンプ、オープン戦を通じて成長した部分はどこですか。

木澤 昨年に比べるとイニング数に対する四球の数が圧倒的に減りました。不必要にランナーをためることがなくなったことが一番大きい部分だと思います。

──制球力が改善された要因はどこにありますか。

木澤 フォームの再現性が上がったというのもあるのですが、シュートを新しく覚えたことによって以前よりも(ストライク)ゾーンの中で大胆に攻めることができるようになりました。ファウルを打たせるという投球スタイルにシフトチェンジした結果、カウントを有利に進めることができるようになったのかなと思います。

──攻め方以外でもシュートを覚える前と変わった点はありますか。

木澤 僕自身の中で「こう投げれば、バッターはこう反応する」というのが少しずつ見えてきました。シュートを投げることでバッターの反応がより分かりやすくなったのかなと。そういったところからも、余裕を持ってマウンドに上がれるようになったと感じています。

──今までは自分のことで精いっぱいだった、と。

木澤 春季キャンプのときに伊藤(伊藤智仁)コーチから「自分自身の投げたいボールを突き詰めるのも一つだけど、バッターが嫌だなというボールを投げなければ、この世界では勝負できない」と言われました。昨年は自分自身が投げたいボールを伸ばしたいと思いながら、試合中も自分自身と戦ってしまうことが多かった。ただ、今年に関しては捕手の構えたところにボールが行くのが必ずしも正解ではないと思って投げることができています。バッターが嫌なボールを投げ続けることに考え方を変えることができたのが、大きいと感じています。

投球スタイルが確立したことで余裕が生まれた。最速156キロのシュートを次々と投げ込み、打者に主導権を握らせない


──今まで思っていた「投げたいボール」というのは。

木澤 1年目は、空振りを取れるようなフォーシーム、ホップするようなフォーシームを目指してトライしてきましたが、バッターに通じなかった。そもそもフォーシームで空振りを取るということは、非常に難しく、いろいろな条件がかみ合わないとできない。であれば、強いボールでファウルを取って、もともと持っているカットボールやスプリットで空振りを取れればいいということで、速球系をシュート系に変更してみようという流れになりました。

──新球種のシュートですが、試合で自信がついたシーンなどはありますか。

木澤 これというのはありませんが、右バッターに対してのシュートの被打率が低いというのは伊藤コーチからもデータを出してもらっています。数字の裏付けがあることで、僕自身も自信を持って投げられるようになっています。

──先ほど「ゾーンで勝負」という話がありましたが、追い込んでからはコースを突く意識は強くなりますか。

木澤 コースの意識はあまりないです。どちらかと言うと変化球は高さが大事です。右バッターの懐をシュートで突いて、あとは大胆に外半分に変化球でいい。その代わり高さだけは間違えないようにという意識で投げています。

中村悠平[右]をはじめとした捕手陣の安定したブロッキングもあり、変化球を低めに集めることができている


──開幕から防御率0.00を維持していましたが、5月には左打者に本塁打を浴びる場面もありました。左打者に対しては何が大事になってきますか。

木澤 右バッターよりも左バッターに打たれているのは事実です。ただ、僕自身はもともと器用なタイプではないので、より一層厳しいコースを狙うということではなくて、全体的な球種の割合の変化などでバッターの意識を変えていければなと思っています。

──左右に関係なく、同じ打者との対戦も増えてきます。そこの対策については。

木澤 今までは初対戦だから抑えられていたというケースが少なからずあったと思うので、ここからが勝負だと思っています。これまで以上に打たれたり、ランナーをためることがあると思いますが、そこで考え過ぎることなく、自分にできることをシンプルに淡々としていくだけだと思います。

冷静かつ熱く


 開幕当初はビハインドでの登板が主だったが、与えられた役割を一つずつこなし、僅差の場面や、ピンチの場面でのリリーフを任されることも増えてきた。目指すポジションはまだまだ遠いが、近道はない。着実にステップを踏んでいく。

──5月8日の巨人戦(東京ドーム)でプロ初勝利。喜びも大きかったのでは。

木澤 初勝利をしたという僕自身の喜びもそうでしたが、どちらかと言えば家族や友人、チームメートや戸田(二軍施設)でお世話になったスタッフ、コーチが喜んでいるのを見て、「自分が頑張ることで喜んでくれる人がいる」という実感が得られたことがうれしかったです。

登板10試合目でうれしいプロ初勝利。1点ビハインドの8回を三者凡退に抑え、最終回の逆転劇を呼び込んだ[右は高津監督]


──5月22日のDeNA戦(横浜)では2勝目を記録しましたが、プロ初勝利とはまた違った感覚でしたか。

木澤 リリーフなので、あまり勝ち星という実感がないのですが、そういった場面で投げることができてきたという思いはあります。

──その2勝目のヒーローインタビューでは好調の要因に「首脳陣の方々から僕の持ち味を生かすアドバイスや指導をしてもらっている」と答えていましたが、あらためて持ち味はどこですか。

木澤 やはり強いシュートでどんどんファウルをとっていく。浅いカウントではゴロを打たせにいって、追い込めば低めにカットボール、スプリットを投げて空振りを奪っていく。これが今の僕の持ち味だと思います。どんなバッターに対しても自分のスタイルで勝負していきたいです。

──その22日のDeNA戦は、5回一死一、二塁のピンチでの登板も、宮崎敏郎選手、大和選手を見事に抑えました。

木澤 その日は右の好打者が多く並ぶ打線でしたので「どこかで(イニングの)途中から行くかもしれない」と思って、準備はしていたので、冷静にマウンドに立つことができました。

──今季登板2試合目のDeNA戦(4月1日、横浜)は、無死一塁から登板も2失点と流れを止められませんでした。前回の反省を生かせたのではないですか。

木澤 以前打たれたときの自分より、できることは増えてきていると思います。今では何をすべきかを冷静に考えてマウンドに立てているので、少しは余裕を持ってバッターと対峙(たいじ)できているなと感じながら投げていました。

──ピンチを切り抜けたあとのガッツポーズ。これも木澤選手の持ち味だと思います。

木澤 伊藤コーチからも「10点負けている場面でマウンドに行っても、ほえて帰ってこい」と言われているので(笑)。チームに勢いをもたらす投球というのも仕事の一つ、自分のスタイルと思ってやっていきたいと思います。

──現在、リリーフ陣が好調です。木澤選手は一番の若手ですが、先輩から学ぶことも大きいのではないですか。

木澤 間違いないです。大きいです。

──マクガフ投手がリリーフ陣の好調の秘けつについて「雰囲気が良くて、仲がいい」ことを挙げていました。

木澤 石井(石井弘寿)コーチの存在が大きいのかなと思います。石井コーチが常にコミュニケーションをとって、ブルペンの雰囲気をつくってくれています。そろそろリリーフの出番が来るというタイミングでは、雰囲気をパッと変えてくださいますし、そういったところでの支えも大きいのかなと思います。

──シーズンは中盤戦へと移ります。どういう投球を心掛けていきたいですか。

木澤 ここからどんどん疲れもたまっていくでしょうし、研究もされていくので、簡単に抑えることはできないと分かっています。繰り返しになりますが、自分のできることは本当に多くありません。なので考え過ぎず、着実にチームに流れを持ってくることができるような投球を続けていきたいなと思います。

5月28日の楽天戦[楽天生命パーク]では4回無死一、二塁のピンチに登板し無失点投球。3勝目をマークした


【FUTURE】描く3年後の自分


信頼を揺るぎないものに

 3年後ですか……。信頼されるリリーバーになっていたいです。勝ちパターンの一角やクローザーとして、ここ一番の場面を任される存在になっていたいです。そのためにも今年1年間は、とにかくシーズンを通してずっと一軍にいたい。一軍に居続けたからこそ見えてくるものがきっとあると思います。まずは故障することなく、離脱することなく一軍にいられるような活躍をするというのが大前提です。

PROFILE
きざわ・なおふみ●1998年4月25日生まれ。千葉県出身。183cm85kg。右投右打。慶應義塾高から慶大に進学。高校時代に右ヒジじん帯を損傷し、大学1年時はリハビリに励んだ。2年春にリーグ戦デビュー。以降は150キロを超えるストレートを武器に、先発投手としてチームをけん引した。2021年にドラフト1位でヤクルトに入団。1年目は即戦力として期待されながら、一軍登板はなかった。迎えた2年目の今季は初の開幕一軍をつかむと、新球種シュートを軸に強気の投球スタイルで好投を続けている。
若手インタビュー

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ニューフェースにスポットを当てる連載インタビュー。

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