父と息子にして、監督と選手・コーチであるがゆえに、人には言えぬ苦しみを味わったこともある。それでも、「野球人・野村克也」と過ごしてきた濃密な時間は誰も手にすることができない、かけがえのない財産だ。 一緒に野球に取り組んだ父と息子の濃密な時間
告別式を終え、楽天のチームに合流してからしばらくたった今でも、まだ父が亡くなったという実感がないというのが正直なところです。実家に帰れば、父が帰りを待っていてくれるのではないか。そんな思いでいっぱいです。あまりにも突然過ぎました。ただ、実際に亡骸(なきがら)と対面すると、すごく安らかな顔をしていました。最期も苦しむことはなかっただろうと言っていただけたのは、せめてもの救いです。
春季キャンプに出発する前に父と言葉をかわしました。今年の楽天は補強もあって戦力が充実していましたので、「いいところまで行けるんじゃないか」「楽しみだな」という話をしてくれましたし、僕が一軍のコーチになったこともあり、「試合も見にいくことができるな」と言ってくれました。いつも父と会ったときは握手をして別れます。その日も同じように、父の手を握ってから実家をあとにしました。それが最後になってしまいました。
父が亡くなると、多くの方が弔問に訪れてくれましたし、メディアの方たちにもたくさんの報道をしていただきました。あらためて父の人望や存在感の大きさに触れ、いろいろな方に影響を与えてきたのだな、多くの方に慕われていた偉大な父だったな、ということを感じることができました。
父は長く現役生活を続けていましたし・・・