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スカウト物語

元中日スカウト・中田宗男 天職だった38年のスカウト人生「星野監督からは『チームの10年先を見てスカウトしろ』といつも言われていました」

 

プロ野球は選手がいなければ成り立たないが、その“金の卵”を探し、獲得するのがスカウトの仕事だ。今号からスタートするこの新連載では、その仕事を経験した新旧スカウトらに話を聞く。第1回は元中日のスカウトで今年1月に、38年のスカウト生活を終えたばかりの中田氏だ。

「素質、素材だけでなく、プロで生きていく力を持っているかも大切」と中田氏


調査活動がより重要


 日体大から即戦力右腕として中日に入団したが、現役生活はわずか5年で終わった。一軍で目立った活躍はなく、引退と同時にスカウトとしての新しい人生が始まり、それは今年1月に定年退職を迎える日まで続いた。

 ちょうどスカウトが手薄なときだったんです。うんもすんもないですよ。社会人の日本選手権が始まるときだったかな、すぐに(スカウト陣と)合流してくれと。現役の未練を感じる時間もありませんでした。私は日体大の出身ですから、入団したときから球団は引退後はスカウトにと考えていたようです。日体大出身なら全国に顔が利くだろうと。当時は日体大からのプロ入りは珍しかったんです。

 それですぐに社会人の日本選手権に飛んで行ったら、他球団のスカウトの方々から「えらい早いなあ」と言われました。「お前のこと見に行ったけど、獲らんでよかったわ」とか(笑)。「ケガでもしたんか?」と聞かれもしましたが、いや、実力ですと。私は人に頭を下げるのが苦手でスカウトには不安もありましたが、ドラフト外で拾ってもらった恩もあり、中日は大好きなチームでしたから、何とかチームのためにやってみようと思ったんです。

 最初は何を基準に選手を見たらよいか分かりませんでした。そしてそれ以上に、自分がプロでやっていたからか、みんな大したことがないように見えるんです。こんな選手はゴロゴロおるだろうと。ただ、その社会人の日本選手権のときですが、一人だけ別格だと思った選手がいました。それが藤高敏高投手(新日鐵広畑)です。投げている球が一人だけ違っていた。ただ聞くところによると彼はプロ拒否なんだと。私も最初は、それを入団させるのがスカウトの仕事だろうと生意気にも思っていたのですが、素質、素材の良し悪しを見るのはもちろんのこと、その選手の性格や身辺、日ごろからの調査活動がより大事だということがだんだんと分かってきました。ひと昔前はそれをしなかったため・・・

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“金の卵”を探し、獲得するのがスカウトの仕事。新旧スカウトらに話を聞く連載

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