
今季12勝目を挙げた千賀。フォークでの空振り率は高い。2年目は登板間隔が短くなる可能性は高く、そこでどういうパフォーマンスを見せられるか!? 期待したい
メッツの
千賀滉大投手の1年目は素晴らしかった。現地時間9月21日終了時点で、28試合に先発し、161.1回を投げ、12勝7敗、防御率2.96、194奪三振、被打率.209である。新人投手ではほぼすべてのカテゴリーで1位。いつもの年ならナ・リーグの新人王に選ばれるチャンスがあったが、今季は運悪くダイヤモンドバックスのコービン・キャロル外野手が大活躍。3人のファイナリストには残るだろうが、
野茂英雄、
佐々木主浩、
イチロー、
大谷翔平に次ぐ日本人5人目の快挙は難しそうだ。
9月20日はマーリンズ戦に先発し、7回7安打2失点で12勝目。「なかなか満足いくようなレベルではなかったが、守備でいいプレーをたくさん出してくれた。自分のボールの質を高めていくことが来年につながると思うので、まだまだやらなくちゃいけないと思う」と向上心が強い。
残り登板はあと1試合だが、「まずは大きなケガなく1年間が終わればいい。目の前に分かりやすい数字も出てきたので、そこはクリアしたい」と付け加えた。200奪三振まであと6個。1年目で200奪三振となれば野茂、
松坂大輔、
ダルビッシュ有に続き日本人4人目である。千賀の伝家の宝刀お化けフォークはメジャーでも無敵だった。空振り率60%で半分以上の104個の三振を奪った。
興味深いのはフォークの被打率.112に加え、長打率も.132と極めて低いこと。本塁打も三塁打も一本も許さず、長打は二塁打3本のみ。加えて称えるべきは後半の防御率で、2.51と安定度が増したこと。20日の好投で8試合連続クオリティースタートとなった。
今季のメッツはオフの大型補強で前評判が高かったが、期待を大きく裏切り、トレードデッドラインでは売り手に回った。そんな中で千賀のお化けフォークは沈んでいたメッツファンの気持ちを明るくした。実はメッツには新人投手が活躍してきた誇るべき歴史がある。新人王に輝いた投手は4人いて、これはドジャースに次ぐ数字だ。
最も有名な新人は1984年のドワイト・グッデン。19歳で218イニングを投げ17勝、276奪三振と球史に残るセンセーショナルなデビューを果たした。新人王はもちろん、サイ・ヤング賞投票でも2位に入った。68年のジェリー・クーズマンも19勝を挙げ防御率2.08だったが、不運にも新人王には選ばれなかった。レッズのジョニー・ベンチ捕手との争いで、1票差で競り負けた。
67年のトム・シーバーは殿堂入りの300勝投手だが、1年目から16勝、防御率2.76の活躍。そのほか72年のジョン・マットラック、2014年のジェイコブ・デグロムが新人王に選ばれている。
充実の1年目を送った千賀だが、来季に向け課題は中4日で投げられるかどうかだ。今季は中4日3試合、中5日17試合、中6日以上が8試合。中4日の3試合は防御率4.61、WHIP1.829と良くはなかった。
今年は首脳陣が起用に気を遣ってくれたが、2年目はそうはいかない。加えて後半は減ったが、9回あたりの平均4.1四球は多い。さらにレベルを上げ、24年はぜひサイ・ヤング賞を目指してもらいたい。
文=奥田秀樹 写真=Getty Images