
昨年開幕前のケガで全休した若手遊撃手のラックス。彼などが大活躍するシーズンになると、ドジャースも世界一への可能性が大きくなる
連日、
大谷翔平、
山本由伸についての大々的な報道により、果たしてドジャースはどこまで強くなるのだろうと思ってしまう。しかしながらアメリカでの前評判はブレーブス優勢だ。パワーランキングでは、MLB公式サイト、ジ・アスレチック、USAトゥディといったメディアが、ブレーブス1位、ドジャース2位としている。
一方でスポーツ専門局ESPN、ネットサイト「ザ・スコア」、「スポーツノート」はドジャース1位、ブレーブス2位だ。ブレーブスを推す人の根拠は看板選手の年齢。プロ野球では23歳~29歳が一般に選手のピーク時と言われる。ブレーブスにはナ・リーグMVPの
ロナルド・アクーニャ・ジュニアを筆頭に、マット・オルソン、
オースティン・ライリー、オジー・アルビーズ、ショーン・
マーフィーなどこの年代の野手が多い。
先発投手でも三振奪取王の
スペンサー・ストライダー、ブライス・エルダーがいる。対照的にドジャースは
フレディ・フリーマン、
ムーキー・ベッツはすでに30代で、
テオスカー・ヘルナンデス、ジェイソン・ヘイワード両外野手も峠を越している。加えて守備もブレーブスは鉄壁。先述の若くてスピードもある選手たちがセンターラインを固め、コーナーの内野に就く。
対照的にドジャースは三塁の
マックス・マンシーの守備は不安だし、ベッツも外野から二塁にコンバートされてきた。ではドジャースがブレーブスを上回るには何が必要なのか? まずは先発投手。ソウルシリーズのパドレス戦で先発する
タイラー・グラスノーと山本の2人が期待どおりの働きをすること。グラスノーは203cm、102kgの巨漢でこれまではケガが多かったが、フルシーズンを投げられれば、サイ・
ヤング賞レベルの活躍を見込める。
山本もここまでキャンプの調整は順調。かなりやるのではないか。2人がローテーションをけん引できれば、昨季11勝4敗、防御率3.76の若手
ボビー・ミラーもそれに続ける。
ウォーカー・ビューラーが2度目のトミー・ジョン手術からの復帰に多少時間が掛かっても大丈夫だろう。野手では
ウィル・スミス捕手、ジェームズ・
アウトマン中堅手、ギャビン・ラックス遊撃手のまだ20代である3人の生え抜きが頑張ること。
スミスは四番に予定されるチャンスに強い打者。守備も昨季は守備防御点(同じポジションの平均的野手と比べてどれだけ失点を防いだかを示す指標)が12点でリーグトップだった。アウトマンは190cm、97kgの大型外野手で守備範囲が広い。昨年は23本塁打、16盗塁で、ナ・リーグ新人王投票で
千賀滉大に次ぐ3位だった。今年はオールスターレベルに進化してほしい。
ラックスは16年のドラフト一巡で長年、若手有望株として期待されてきた。しかし1年前はオープン戦で右膝を痛めシーズンを棒に。すでに26歳で今年に期するものがあるはずだ。カブスのクレイグ・カウンセル監督は先日、「私の経験からすると特別なシーズンを送れたチームは、予想以上の働きをする選手が何人も出てくる」と語った。
看板選手は大谷、ベッツらだが、若手の台頭があってこそ、真に強いチームになれるのである。
文=奥田秀樹 写真=Getty Images