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【MLB】ア・リーグMVP争いでジャッジに挑戦 攻守にエリートのウィット・ジュニア

 

もともと有望株として期待されていたウィット・ジュニアだがさらにその才能を開花させて、攻守でMVPを狙える選手にまで成長している


 ア・リーグMVPはヤンキースのアーロン・ジャッジが本命だが、ロイヤルズの3年目、24歳のボビー・ウィット・ジュニアも特筆すべき素晴らしいシーズンを送っている。現地時間8月28日終了時点で打率.346、安打数185、114得点は1位。二塁打(39)と三塁打(11)の本数もトップ3に入り、ほかの数字も28本塁打、95打点、27盗塁、OPS1.017をマークしエリートレベルだ。

 長打率.618はジャッジ、大谷翔平に次ぐ3位だ。昨年はブレーキングボールに打率.212と苦しんでいたが、今年は.349と攻略。三振率は年々減少し15.2%、逆に四球率は7.5%、平均打球速度は39.2マイルと年々上昇している。スイング幅は短いが、バットスピードは速い。打撃同様、傑出しているのは守備力だ。

 データサイト「ファングラフス」によると、守備力は平均より17.4ポイントも上でメジャー全体でトップ(2位はメッツのフランシスコ・リンドーア遊撃手の15.6)。おかげで、打撃面で歴史的なシーズンを送るジャッジをWARで追いかけている。1位ジャッジの9.7に対し、ウィットが2位の9.3だ(3位はフアン・ソトの7.5)。ウィットの守備で驚くのは、2年前は新人遊撃手で「ファングラフス」のデータで-3.3と平均以下だったが、23年は15.0でメジャー8位と飛躍的に上昇した。

 スタットキャストの守備指標OAA(アウト・アバブ・アベレージ/野手が平均よりどれだけ多くのアウトを奪っているか)で見ても、22年に-11だったのが、23年は+14、今季は+17で2位タイ(首位はナショナルズのジェイコブ・ヤング中堅手の+20)である。ウィットは肩が特に強いわけではないが、スプリントスピードが30.4フィート/秒とメジャーきっての俊足、スピードを生かして守備範囲がとても広い。

 ウィットの父親はメジャーで16年のキャリアを送り142勝を挙げた右投手ボビー・ウィット。2ケタ勝利が7度でアスレチックス時代に開幕投手を務めたこともあるが、四球が多く、通算防御率も4.83と良くなかったために、オールスター選出は一度もなかった。息子は3年目にオールスター選出、父親を超えるキャリアを送ろうとしている。

 プロ入りにあたっての父親のアドバイスは「努力し、謙虚であり、自分らしくあること」だったそうだ。そのとおりにし、着々とプレーレベルを上げてきた。本人は自身の攻守にわたる成長について「得意でないことを改善しようとしてきたけど、全体的に成長することで良くなると思う。試合に出てプレーを続けるほど、毎日学べる。楽しみながら、自分がどこにいるのかを知ることが大切」と説明している。

 今年2月、ロイヤルズは11年総額2億8870万ドル(約417億円)の巨額の契約を与えた。そしてチームも23年は56勝106敗だったが、今年はここまで75勝59敗、シーズンでは91勝71敗ペース。100敗から90勝を達成すれば史上初の快挙となる。ロイヤルズもウィット・ジュニアもこの調子を維持できれば、ジャッジとのMVP争いはもっと面白くなるのである。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images
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メジャーから発信! プロフェッショナル・アイデアの考察[文=奥田秀樹]

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