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【MLB】MLBのルール改正は2年目も成功 テンポよくアクションを楽しめるゲームに

 

2023年に新ルールを導入したロブ・マンフレッドMLBコミッショナー。いまだに選手からの反対意見もあるが、ファンを増やすための施策としては結果を残した。今後はどんなルールを追加するのか楽しみだ


 2023年のルール改正から2シーズン目が経過した。概ね良いものだったと思う。個人的に良かったと思う1番目は、盗塁が復活したこと。24年の3617個の盗塁成功数は、1900年以降では14年の4574個、15年の4108個に次ぐ3番目の数字。2022年は2486個だったのに対し、23年は3503個と1000個以上増え、24年も増加した。盗塁成功率は昨年の80.2%から少し下がった79%だったが、大谷翔平の93.7%は、盗塁の有効性を大きく証明した。来年以降、大谷に続こうとする選手がさらに出てくるはずだ。

 2番目はピッチクロックの導入。22年からは28分、23年からは4分、2年連続で時間短縮に成功した。9イニングの平均試合時間が2時間36分になり、これまで最短記録だった1984年より1分短くなった。2023年導入直後の4月は2時間37分と短くなったが、徐々に長くなり9月は2時間44分だった。しかし、今年は各月で2時間36分前後と安定していた。

 近年、野球は退屈なスポーツだと批判されていたが、問題は野球そのものではなく、攻守(投打のプレーの中)の時間が掛かり過ぎていたことだった。余計な動作など、時間の無駄を省いたことでテンポが良くなり、ファンは次々に飛び出すプレーを楽しめる。

 現場の選手もピッチクロックにアジャストした。投手、打者、捕手による違反の合計は23年の1048回から602回と大幅に減少。投手による違反が747回から465回、打者が286回から133回、捕手が15回から4回へと著しく減った。ちなみに、一番違反が多かった球団はアストロズで35回、個人ではナショナルズのカイル・フィネガン投手で11回だった。投手がけん制球やプレートを外す行為を、2回の制限を超えて行う違反(投手の離脱制限違反)は34回、打者によるタイムアウト違反が5回だった。

 一方で、意図したような効果が出ていないのが内野の守備シフトの制限だ。違反そのものは初年度の26回から著しく減少して2回だったのに対し、打者の打率は意外にも上がらなかった。23年のMLB全体の打率は.248と上昇し効果があったかと思われたが、今年は.243に下落し、1900年以来の5番目に低い数字。両リーグで打率3割を超えたのは大谷を含めわずか7人で、68年の6人に次いで2番目に少なかった。

 打率が上がらない大きな理由の1つは外野守備。身体能力の高い野手の守備範囲が広いことに加え、打者の傾向に応じて適切にポジション取りをさせている。そこでMLBは外野守備におけるシフト制限の導入についても検討を進めている。

 打率は上がらなかったものの、それでも時間が短縮され、動きのあるテンポの良い試合が見られることで、若いファンが増えた。テレビ視聴者については、18歳から34歳の視聴者がESPNの日曜日の全米中継で12%、土曜日のFOXの中継では9%増加した。インターネットによるMLBTVの視聴時間も14%増えた。

 MLBの平均観客数も昨年に比べて0.9%増えて、2年連続の上昇。2413試合で7135万人を動員した。大谷、アーロン・ジャッジとスーパースターたちの活躍が大きいが、ルール改正もMLBの成功を後押ししている。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images
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メジャーから発信! プロフェッショナル・アイデアの考察[文=奥田秀樹]

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