昭和世代のレジェンドの皆さんに、とにかく昔話を聞かせてもらおうという自由なシリーズ連載。徳武定祐さん編の2回目は、早大から国鉄スワローズ(現ヤクルト)への入団を決めるところから始まります。
文=落合修一

力道山から口説かれて断った大学生

──前回からの続きです。早大4年(1960年)の秋の伝説の「早慶六連戦」のときは、ご自身のプロ入りに際してどの球団に入るかというタイミングだったんですよね。

徳武　12球団中、11球団から誘われました。なぜか近鉄だけ来なかった。巨人のスカウトからは「長嶋(長嶋茂雄)をショートにコンバートするから来てくれ」と言われました。そんなわけないと思いましたけど(笑)。大毎(現ロッテ)は、プロレスラーの力道山さんが東京からスポーツカーに乗って、早大が合宿していた軽井沢まで夜中の12時くらいに会いに来てくれました。当時、プロレスのスポンサーが毎日新聞だったから、毎日新聞からの使者として来たんですよ。僕は大学生のときに、あの力道山と1対1で会って話した。これは今でも忘れられないですよ。プロ野球選手になってからはリキさん(力道山)とお付き合いがあったんですけど、その時点で僕は学生でしたから、そりゃ、感激しましたよね。

──でも、大毎オリオンズには入らなかった。

徳武　やっぱりセ・リーグのチームが良かったし、中でも東京のチーム希望だったので巨人と国鉄に絞られました。国鉄は、金田正一さんが口説きに来ましたよ。あの大投手が僕の手を握って、「お前、良い手をしているな。一緒に野球をやろう」と言うのです。もともと、各チームの三塁手を比べると、国鉄は箱田淳さんというベテラン選手が移籍しそうだったので、国鉄なら僕の出番があるなというのがあったんです。そこに金田さんが誘ってくれた。巨人にもあこがれていましたが、出場機会が最優先。だから国鉄を選んだんです。

──そこは現実的だったのですね。

徳武　いくらプロに入っても、出ないと意味がないですからね。それにしても、若い世代に国鉄スワローズという日本国有鉄道のプロ野球チームがあったんだよと言っても、訳が分からないでしょうね。

──当時の国鉄は、どういうチームだったのですか。

徳武　金田さんのワンマンチームですよ。でも・・・