
「ミスター・タイガース」と呼ばれ、阪神の中心選手だった田淵幸一は深夜のトレード通告に憤りを隠せなかった
誰もが認める正捕手&主砲
10月17日、俳優・西田敏行の訃報が伝えられた。76歳だった。
『釣りバカ日誌』、『学校』……。名優の代表作は数あるが、その中でも、主人公・タブチくんの声を演じたアニメ映画『がんばれ!!タブチくん!!』(1979年)が印象に残る読者は多いはずだ。
物語は冒頭、こんなシーンから始まる。
西武のユニフォームを身にまとい、いつもように球場に入るタブチくん。鼻歌まじりにロッカールームで準備する彼を、タテジマ姿の阪神選手たちが怪訝(けげん)そうな顔で見つめる。そこは甲子園だった。振り返ったタブチくん、頭をかきながら「あ、ボクもうタイガースやめたんだ。球場間違えた。西武ライオンズのタブチだっけ。えへへ」。そのあっけらかんとした物言いに、思わずズッコケる阪神選手たち……。
天真爛漫(らんまん)なタブチくんらしい、ユーモアあふれるシーンだ。だが、タブチくんのモデル、田淵幸一が実際に「タイガースやめた」経緯は、決して笑えるものではなかった。
78年11月15日深夜。ゴルフから帰宅した田淵は、何時になってもいいから梅田のホテル阪神に来るようにという阪神球団からの伝言を受け取る。悪い予感を抱きながら愛車を走らせること40分。ホテルに到着し、指定の特別室に入った時点で、日付は16日に変わっていた。
それから約2時間後の深夜3時・・・
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