週刊ベースボールONLINE

よみがえる1990年代のプロ野球

【90's FILE】横浜・ホエールズからベイスターズへ 熟成期間を経て38年ぶり日本一

 

近藤昭仁監督、大矢明彦監督の下で力をつけてきた選手たちの才能が一気に開花。権藤博監督がVへと導いた


地域密着型ベイスターズ誕生


【90年代成績】650勝665敗6分勝率.494(リーグ5位)

 5人の監督が指揮を執った1990年代。前半低迷するもチーム力は徐々に底上げされ、38年ぶり日本一へと実を結ぶ。

 90年は須藤豊新監督が就任し、7年ぶりのAクラスに躍進。野村弘樹が“巨人キラー”ぶりを発揮し、打線はパチョレックが首位打者に輝いた。91、92年は5位に終わるも、2年目の佐々木主浩が抑えとして台頭するなど、のちの主力選手が成長。92年、シーズン途中に突如辞任した須藤監督に代わって江尻亮新体制になると、進藤達哉石井琢朗ら若手を積極的に起用し後半は旋風を巻き起こした。打点王のラリー・シーツ、最優秀防御率の盛田幸妃、最優秀救援投手の佐々木とタイトルホルダーも多数輩出。ホエールズ最終年、大洋一筋の遠藤一彦がユニフォームを脱いだ。

 チーム名を「横浜ベイスターズ」に改称した93年、地域密着型チームとして生まれ変わる。初代監督に就任した近藤昭仁監督は、ロバート・ローズを二塁、野手転向2年目の石井を三塁に起用し進藤と三遊間を組ませるもベイスターズ元年は5位。高木豊屋鋪要ら80年代を支えた選手を大量解雇し、94年は世代交代を図った。FAで駒田徳広を獲得し、グレン・ブラッグス、ローズらと打線をけん引したが、先発陣が2ケタ勝利ゼロで最下位に沈む。近藤体制最終年の95年は16年ぶりの勝率5割超えで4位に浮上。のちのマシンガン打線の主力打者が打ちまくり、佐々木は2度目の最優秀救援投手に輝いた。

38年ぶり日本一へ


 90年代4人目の指揮官は大矢明彦監督だ。96年は斎藤隆佐伯貴弘が月間MVPをW受賞するなど見事な開幕ダッシュで“春の珍事”とマスコミを賑わせたが、あっという間に転落。投手陣崩壊で最終的には5位に終わった。8年目で頭角を現した谷繁元信が正捕手の座をつかむ。大矢政権2年目は大躍進。投手陣再建のため権藤博投手コーチを招へいし、若手投手陣が急成長した。真夏の8月に20勝6敗の驚異的なペースでヤクルトを追い上げ18年ぶりの2位。打撃10傑に4人が入り鈴木尚典が首位打者に輝いた。2位に押し上げた大矢監督は解任されたが、翌年の栄冠へ基盤は確実に整った。

 98年、権藤投手コーチが新監督に就任すると、バントなし、ミーティングなしなど独自采配を実行。脂の乗りきった選手たちと型にはまらない権藤イズムがかみ合い、就任1年目で38年ぶりのリーグ制覇&日本一を成し遂げる。中継ぎローテーションを確立し、絶対的守護神・佐々木につなぐ方程式は盤石。「大魔神が出てきたら終わり」と相手チームの戦意を喪失させた。打ち出したら止まらない脅威の“マシンガン打線”も強い横浜の象徴。石井琢、波留敏夫の一、二番コンビがチャンスメークし2年連続首位打者・鈴木尚、ローズ、駒田の主軸がかえす破壊力はすさまじかった。

 翌99年、首位打者、打点王のローズを軸にマシンガン打線の威力は増し、チーム打率.294でプロ野球新記録をマーク。先発陣も17勝の川村丈夫、14勝の斎藤隆と奮闘するも佐々木の故障離脱でリリーフ陣が精彩を欠き3位止まり。オフにはFA権を行使した佐々木がメジャーへ旅立った。

■年度別成績

※92年監督は須藤豊、江尻亮


■90's WHALES/BAYSTARS ベストナイン

■ベストオーダー
△は左打ち

打順/位置/選手名
1(遊)△石井琢朗
2(中) 波留敏夫
3(左)△鈴木尚典
4(二) ローズ
5(右) ブラッグス
6(一) パチョレック
7(捕) 谷繁元信
8(三) 進藤達哉
9(投) ―――

■ベスト投手陣(先発6、中継ぎ3、抑え1)
△は左投げ

選手名/試合/勝利/敗戦/セーブ/防御率
<先発>
△野村弘樹/220/91/61/0/3.81
 斎藤隆/177/62/51/1/3.59
 三浦大輔/173/49/43/0/3.89
 川村丈夫/78/35/19/0/3.20
岡本透/132/27/29/2/3.69
 戸叶尚/105/22/26/0/5.11

<中継ぎ>
△盛田幸妃/270/40/33/28/3.89
 島田直也/317/38/35/9/3.49
 五十嵐英樹/240/31/28/9/4.09

<抑え>
 佐々木主浩/405/42/33/229/2.31

■タイトルホルダー

<最優秀選手(MVP)>
佐々木主浩 98年

<首位打者>
パチョレック 92年 .460
鈴木尚典 97年 .335
鈴木尚典 98年 .337
ローズ 99年 .369

<最多打点>
シーツ 92年 100
ローズ 93年 94
ローズ 99年 153

<最多安打>
石井琢朗 98年 174
ローズ 99年 192

<最多盗塁>
石井琢朗 93年 24
石井琢朗 98年 39
石井琢朗 99年 39

<最高出塁率>
ローズ 97年 .444

<最優秀防御率>
盛田幸妃 92年 2.05

<最多勝利>
野村弘樹 93年 17

<最優秀救援(SP)>
佐々木主浩 92年 33
佐々木主浩 95年 39
佐々木主浩 96年 29
佐々木主浩 97年 41
佐々木主浩 98年 46

<最優秀中継ぎ(RP)>
島田直也 97年 24.75

<最多奪三振>
斎藤隆 96年 206

関連情報

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング