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今井達也コラム

今井達也コラム 第1回 2025シーズン開幕「僕の中の常識は誰かの非常識。僕の中の非常識は誰かの常識」

 


2年連続開幕投手


 今シーズンから月1回のペースで選手コラムを担当させていただきます。タイトルは『常識こそ非常識』に決めました。2023年1月にトレーナーの鴻江寿治さんが主宰する自主トレーニングに参加してから感じたことで、僕の考えの基本となっています。それは野球以外にも通ずることです。例えば、僕はこのソファーが好きだけど、気に入らない人もいる。座り心地などによって、好き嫌いが変わってきます。僕の中の常識は誰かの非常識。僕の中の非常識は誰かの常識。それは常に心に留めていることです。

 だからコラムで自分の考えをつづっていきますが、それを押し付けるつもりはありません。読者の方々もそれぞれの考え方があるので、それは尊重しないといけない。もちろん常にアンテナを張って、いろいろな人の考えを見聞きすることは大切です。ただ、それをうのみにせずに、自分にとっての“常識”なのか“非常識”なのかを見極めていくことが必要になってくると思います。

 さて、2025年のペナントレースが3月28日に開幕します。昨年、僕は奪三振王のタイトルに初めて輝き、2年連続10勝をマークすることができました。イニングも173回1/3とキャリアハイに達しましたが、今年もケガをせずに1年間先発ローテーションを守ることが大事になります。まずはその点にフォーカスしていきたいと考えています。

昨年は楽天戦[楽天モバイル]で開幕戦勝利。7回無失点11奪三振と見事なピッチングだった


 開幕に向けてここまでは順調に来ていますが、ケガをすることが一番良くないことですから。オフから地道に練習を重ねてきて、開幕前にケガをして離脱してしまうとモチベーションの維持も難しくなってしまいます。僕はケガをしないことをテーマに置いてトレーニングを続けていますから、その面に関しては自信を持ってできていると言えます。

 昨年11月のサンクスフェスタで西口文也監督から2年連続開幕投手に指名していただきました。開幕投手は首脳陣の方からの信頼を得て任される役割だと思います。自分もそのような立場になったということなので、より一層、責任感を強く持たなければいけないでしょう。だけど、“開幕投手だから”ということを意識してオフを過ごしてきたわけではありません。

 そもそも僕はそのような考え方に違和感を覚えます。例えば、キャンプで練習前に“休み前だから”“休み明けだから”といった表現をされることがありますが、それがあまり好きではない。その一瞬のときのためという考え方を好まないというか。だから開幕投手も最初の1試合という感覚です。もちろん勝利でスタートを切れればチームにとっても大きいですが、ペナントレースは143試合ある。1年間戦い抜くことが大事になります。

マウンドで欲は出さない


 最初の登板で相手にインパクトを与えることも大事ですが、意図的にそれをやろうとは考えていません。結果的にそうなればいいとは思いますが。結局、ピッチングに対する評価は自分自身でどうにかすることはできないですから。打席で「打つのは無理だ」と感じる打者がいれば、「大したことないな」と感じる打者もいるでしょう。評価とはそういうもので、それはそれで別に構わないことです。

 大前提として野球は運要素が強いスポーツだと思います。自分の力だけでは結果を左右することは難しい。ここ最近は結果に執着することはなくなりました。マウンドで自分のベストを尽くすのは当たり前ですけど、相手もプロなので抑えるときもあれば、打たれるときもある。完璧な当たりでホームランを打たれたら100%打者の勝ち。その半面、ぐしゃっと詰まった当たりの安打が2、3本続くときもあります。それを悔いても仕方ない。一喜一憂しないので、結果にとらわれているピッチャーよりは楽な気持ちでマウンドに立てていると思います。

 練習に関してはレベルアップのために欲を出して取り組みますが、試合では欲を出さないようにしています。なぜ、欲が出るのか。結局、今自分ができていないことがあるから欲が出るのでしょう。160キロを投げられないから投げたいという欲が出る。でも、マウンド上でできないことをやろうとするのが良くないと思います。それがケガにつながってしまう可能性もありますし、できる範囲で最大限の力を発揮することが大事になります。

強弱をつける意味


 今年は脱力したフォームで投げていますが、そればかりでなく力を入れて投げるところもオープン戦で見せました。現代の野球はピッチャーもバッターもデータが重視されています。ピッチャーはデータによってどのようなボールを投げるか丸裸にされてしまう時代です。何もせずに手をこまねいていると、いずれ攻略されてしまう危険性があります。だから、ピッチャーはデータで表せない部分でどうやって勝負していくかが大事だと思っています。

 データを超えるためにフォームに強弱をつけて投げることを実践しているんです。ストレートのデータを取っていても、それが脱力したフォームで投げたのか、力を入れたフォームで投げたのか、そこは分からないでしょう。同じストレートとして、データ上ではカウントされるはずです。データが当てにならないピッチングをすれば、打者も攻略しづらくなるはずです。実際にまったくタイミングが合っていなかったり、迷ったりしているバッターが多いようにマウンド上で感じました。ストレートに詰まってファウルになるなど、自分のポイントで打てていないバッターが結構いました。

 また、スピードだけではバッターから空振りを奪うことはなかなか難しい。フォームの中で変化球を投げると思わせてストレートを投げたり、ストレートを投げると思わせて変化球を投げたり。そこもデータに表れない部分になるでしょう。そもそも筋力が上がっても、あまりスピードは変わらないように感じます。それよりも力を抜いたり入れたりするタイミング、力を入れたり抜いたりする場所が重要です。

 配球だけでは限界を感じている部分もあります。どのようにしてバッターをだましていくかということも必要なことです。自分は力を入れて投げているけれど、第三者から見て力が入っていないように見えるのが理想。155キロに見える150キロをずっと投げていれば、抑える確率も上がるのではないかということを考えることもありますね。

 ただ、最近考えているのはスピードが上がることはいいことでも悪いことでもないのかなということです。球が速くなった代わりに失うものもあるのではないか、と。例えば、前に投げられていた変化球が投げられなくなったり、体に負担がかかってケガにつながったり。何かを得たら何かを失うし、何かを失ったら何かを得る気がします。だから、自分のストレートは何キロなんだという事実があるだけだと考えています。

 今のライオンズ投手陣は高橋光成さん、平良海馬など、一軍で活躍している選手が向上心を持って真摯(しんし)に野球に取り組んでいます。その姿を毎日みんなが目にして、後輩の刺激にもなっている。それが全体的なレベルアップにつながっていると思います。

 昨年、週刊ベースボールのタイトルホルダーインタビューで「ファンの方にとっての希望、対戦相手にとっては絶望でありたい。ライオンズファンの方からは『今日は今井が投げる。勝った!』で、相手側からは『今日は今井だ。負けたわ』って思われる投手になりたい」と目標を挙げましたが、当然そこを目指していきます。ファンの方が見ていて楽しめるピッチングができれば、自然と実現できるのではないかと思います。

オープン戦では2試合に投げ、7イニングを無失点。開幕に向け不安はない


写真=兼村竜介、BBM

PROFILE
いまい・たつや●1998年5月9日生まれ。栃木県出身。180cm80kg。右投右打。2016年、作新学院高3年時に夏の甲子園で優勝。同年秋のドラフトで西武からドラフト1位指名を受け入団。23年に初めて2ケタ10勝を挙げ、昨年も10勝をマーク。187三振を奪い奪三振王のタイトルにも初めて輝いた。今季は2年連続開幕投手に指名され、エース格として投手陣をけん引する。
今井達也の常識こそ非常識

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西武・今井達也がつづる、月1連載コラム

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