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2015甲子園特集

清宮幸太郎(早実1年/内野手) フィーバーを受け止める16歳

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甲子園で1打席も立っていない16歳に集まる脚光


大阪入りを前に、早実・王貞治記念グラウンド(東京都八王子市)での最終調整に余念のない清宮。甲子園でのアーチに期待がかかる



 日本高等学校野球連盟から7月31日の夕刻、1枚の広報FAXが届いた。タイトルは「出場校の宿舎変更について」。

 早実(西東京)の宿舎が、東東京代表が滞在する予定だった関東一と入れ替わる措置が取られた。当初の宿泊先は甲子園球場から徒歩5分。「警備上の都合」がの理由。ホテル周辺は住宅街に位置し、歩いて球場入りするのに伴う、混乱を回避するための判断だった(変更したホテルはバス移動)。

 新怪物1年生・清宮幸太郎の“甲子園フィーバー”に備え、事前に大会主催者が動いたのだ。過去にない対応だという。

 史上最速。かつて東邦・坂本佳一、PL学園・桑田真澄清原和博の「KKコンビ」、星稜・松井秀喜、大阪桐蔭・中田翔、早実の先輩では王貞治、荒木大輔ら多くのスーパー1年生が聖地で躍動した。すべて開幕後の活躍を受けて注目されたケース。1打席も立っていない16歳が脚光を浴びるのは、異例の早さなのである。

 入学式から3日後、東京大会3回戦(対駒大高)のデビュー戦(三番・一塁)から約50人の報道陣が集結した。ラグビートップリーグのヤマハ発動機・清宮克幸監督の長男という知名度に加え、世界一となった中学1年時に米国メディアが“和製ベーブ・ルース”と評して以来の実力と話題性。2万8000人の大観衆となった東海大菅生との決勝は0対5の8回に8点を奪う奇跡的な逆転勝利。追い上げるにつれ、場内は早実の大声援でボルテージは最高潮に達した。5年ぶりの甲子園出場も「清宮効果」が後押ししたのは確かだ。

 全6試合で安打を放ち、打率5割でチームトップの10打点。勝負強さは父譲りで、どんな場面も物怖じしない。現状のフィーバーを受け止める冷静さもあり、並の16歳ではない。

「注目? うれしいですね。声援が自分の力になっている。決してマイナスではなくモチベーションになっている部分が大きいです。注目されてナンボ、だと思っているので」

 さらに、1年生がここまで言う。話題先行であると自覚しているのだ。「逆に注目度(の高さ)に、実力が追いついていない。いつもどおりの自分が出せれば、応えられると思う」

 すでに高校通算13本塁打。西東京大会はノーアーチだっただけに、清原、中田らが記録した「1年生夏甲子園本塁打」に期待が集まるが、チームあっての自分を忘れない。

「打ちたい気持ちはありますけど、こにこだわるのは根本的に違う。チームの勝利に貢献できるのなら、ヒットの延長で入ってくれればいい」

 父は2月の日本選手権を制し、弟・福太郎は7月にリトルリーグ日本一。「俺だけじゃん、と。追いつけるようにしたい」。高校野球100年の今夏、斎藤佑樹を擁した06年以来の全国制覇が目標。清宮にはフィーバーだけで終わらせない覚悟がある。

7月30日の公開練習で8月6日の開会式で入場行進する復刻ユニフォーム(早実を含めた第1回出場10校)が披露され、あらためて意気込みを示した(写真左から清宮、菅野太一選手、加藤雅樹主将)



公開練習でこの報道陣の数にも、1年生は「注目されてナンボ」と清宮は“歓迎ムード”。甲子園ではさらにヒートアップが確実である



早実は7月31日、東東京代表の関東一とともに、舛添要一東京都知事を表敬訪問。いよいよ本番モードだ



取材・文=岡本朋祐 写真=中島光明、菅原淳

PROFILE
きよみや・こうたろう●1999年5月25日生まれ。184㎝ 97㎏。右投左打。早実初等部4年時から東京北砂リトルで野球を始め、早実中等部1年夏に世界選手権に出場し三番・投手で、12打数8安打、3本塁打、6打点で世界一。その後、調布シニアに在籍し一塁手に専念。早実では1年春から三番・一塁に定着。父・克幸さんはラグビーのトップリーグ・ヤマハ発動機監督。今夏の西東京大会は6試合、20打数10安打、打率.500、10打点。高校通算13本塁打。

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