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野村克也の本格野球論

野村克也が語る「エース」

 

攻略法が見つからないほど素晴らしい内容だった


4月6日の阪神戦[東京ドーム]で完封勝利を遂げた菅野。まさにエースの投球だった/写真=小山真司


 今週号の特集は『プロ野球最強のエース』だと聞いた。今シーズンに入って私が見た「これぞエース」というピッチングは巨人対阪神2回戦(4月6日)、巨人・菅野智之の完封劇である。

 コントロール、球威ともに抜群。1球目、2球目で簡単にストライクを取ってしまう。カウント2ボール0ストライクは一度もなく、常に0-1、1-1といった投手有利のカウントからピッチングの幅を広げていく。これは菅野に限らず、ピッチャーがいいピッチングをするときの前提。常にピッチャーペースで、まったくスキがないのだ。

 阪神側が指示を出せたとしたら、「第1ストライクを狙え」くらい。しかし、(外角低めを狙う)“原点能力”に長けた菅野が相手では、バッターは手も出ない。そこで初球ストライクを取られてしまうか、あるいは1ボールからの2球目を狙っても、決して甘いコースには来なかった。何を狙え、こう打て、という攻略法が見つからないほど、素晴らしい内容だった。

 その菅野が、なぜか神宮球場では勝てなかった。プロ入り以来3年間、昨年のクライマックスシリーズを含む7試合に勝ち星なし(5敗)。ピッチャーにもバッターにも、こうした『鬼門』はあるものだ。初めは“たまたま”。しかし、それが続くと、やがて苦手意識に変わってしまう。同じ球場で7戦勝てないとは、「まだまだエースとは言えなかったか」と書こうかと思っていたら、13日のヤクルト5回戦(神宮)で4安打完封し、ついに壁を打ち破った。逆にヤクルト側からすれば、なんとしてもこの試合に勝って、菅野に苦手意識を持ち続けてほしかったところだろう。

 南海のエース・杉浦忠は西鉄の本拠地・平和台が嫌いだと言っていた。これは後から分かったことだが、三原脩監督がサインをのぞかせていたのだ・・・

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勝負と人間洞察に長けた名将・野村克也の連載コラム。独自の視点から球界への提言を語る。

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