
文=平野重治
第65回全日本大学野球選手権記念大会(神宮ほか)は、中京学院大学(東海地区)の初優勝で幕を閉じたが、意外だったのは、優勝候補の筆頭に挙げられていた明大(東京六大学)が、初戦(2回戦)で関西国際大(
阪神大学)に1対2で敗れ去ったことだった。
この明大の“イチコロ”、98年の第47回大会以来の屈辱だったが、この大会に臨む明大は、春のリーグ戦、
川上憲伸という絶対的エースが卒業して(
中日入団)、戦力低下は明らかだったのだが、打線がコツコツ点を取り、投手陣も総動員で競り勝ち、10勝(2敗)を挙げて勝ち点5の完全V。通算30度目の優勝に花を添えた。勢いは十分だ。
しかし、大学選手権では初戦(2回戦)で青森大に1対5の完敗。先発の
小笠原孝、リリーフの
木塚敦志は、のちにプロで活躍する好投手。打線にも
辻竜太郎、
的場直樹のプロ入り組がいた。にもかかわらず1対5の完敗。トーナメント一本勝負の怖さだった。
この大会、明大は敗れたが、好チーム、好選手が目白押しで面白かった。優勝した近大(関西学生)には、のちに
巨人などで活躍する
二岡智宏、昨年まで阪神などでマスクをかぶった
藤井彰人がいて、前年に続いて連覇(4度目)。近大は7対0、5対3、5対3、4対3のスコアで勝ち抜いたのだが、初戦以外は苦戦の連続。一番苦しかったのは、準々決勝の愛知学院大戦。延長11回表を終わって2対3。近大の連覇は大ピンチ!
しかし、ここで二岡が奇跡の一打。一死一、二塁で逆転サヨナラ3ラン(写真)。47回の大会史上、逆転サヨナラ本塁打は初めての快挙。二岡は、この試合から準決勝の青森大戦、決勝の東海大戦にかけて6打数連続安打。これも大会新記録だった。
投手の投げ合いで手に汗握る勝負となったのが、1回戦での大体大・
上原浩治と九共大・
山村路直の激突。結果は大体大が1対0のサヨナラ勝ち。のち上原は巨人、山村はダイエーに入団するが、150キロ投手の投げ合いは迫力があった。この大会、青森大がベスト4。国立大の京都教育大が2勝と地方勢が大健闘。それにしても、上原がいまだ現役(レッドソックス)というのはオドロキだ。