
文=平野重治
巨人・
福田聡志投手ら3選手が野球賭博に手を染めていた事件はショックだった。「まさか、もうないだろう」と思っていたのに、あの69~70年の悪夢の“黒い霧事件”がよみがえってきた。プロ野球選手の野球賭博は、これはもう宿痾のようなもので治らないのかもしれない。こんな絶望的な気持ちにさせてしまう福田らの罪は限りなく重いのだが、先の黒い霧事件、野球賭博以外でも永久失格(追放)になったり出場停止処分になったりした選手がかなりいたのをご存じだろうか。
中日・
小川健太郎投手(オートレース八百長で逮捕。永久失格)、
阪神・
葛城隆雄外野手(オートレース八百長で逮捕。3カ月の期限付失格選手)、
ヤクルト・
桑田武内野手(オートレース八百長で逮捕。3カ月の期限付失格選手)。また、現役選手ではないが、
田中勉元中日投手、
高山勲元大洋外野手兼投手がやはりオートレースの八百長で逮捕されている(2人は、野球賭博の疑いもかけられていた)。
それにしても、当時の野球選手はオートレースが好きなようだ。しかも、そこで八百長を簡単に仕組めるのだから、プロ野球の選手とオートレースの選手には、長年にわたる“黒い関係”が背景にあるのだろう。幸い、近年はオートレースの世界は透明になったようで、問題は起きていない。その名誉のために付け加えておく。
それはともかく、永久失格になった小川投手は、最多勝投手になった(67年、29勝)ほどの選手なので、プロ野球ファンは驚いた。小川はプロ野球での敗退行為(八百長)もあったのでは、と言われていたが、こちらの方はアイマイなまま永久失格となった。
巨人・
王貞治内野手にあまりにもボカスカ打たれるので(68年は17打数10安打、3本塁打、打率.588、15四死球!)、69年に、ヤケッパチであの背面投げを試みたのはあまりにも有名だが、小川は54~55年に東映に所属も退団し(一軍出場なし)、56~63年社会人の立正佼成会でプレー、64年に再度プロ入り(中日)という球歴を持っている。この苦労の末つかんだ栄光を自ら踏みつぶしてしまった。写真は69年6月15日、巨人戦での背面投げ。