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高橋一三投手の現役時代を知らない記者に「評伝」を書かせるのはいかがなものか。ほかならぬ読売新聞ともあろうものが

 

 1968年のことだったが、参院選の全国区で高得票を得て当選した2人の文化人、石原慎太郎氏と青島幸男氏がラジオで対談したことがあった。「タレントが国会議員になる時代」と話題になったものだが、そこにやや過剰反応して「タレント議員がなぜ悪い。英語でタレントフルというのは才能、能力があるという意味なんだよ」と石原氏がムキになったとき、浪人受験生だった筆者は思わず吹き出した。

 タレントフルなんて英単語はない。「才能がある」という意味の単語は「タレンティド」(TALENTED)。石原サン、「フル」(FUL)を付ければ何でも形容詞になると思ったらしい。

 それより少し前だったが、作家の開高健氏が「ナポレオン憲法のような文体で書くことが云々」とどこかで書いたのを、作家の大岡昇平氏が「あれは憲法ではなく民法典だ。そういう無知なことを書いてはいけない」とたしなめたことがあった。

 我々は一流の物書きは、一流の教養人だと思い込んでいるが、案外、間違ったことの言いっ放し、書き飛ばしが多いのである。

 筆者が言いたいのは、英語に自信のない人は妙なカタカナ文字を乱発するのは避けた方がいいし、フランス革命と、ナポレオン時代をよく知らない人は、それについては、口をつぐんだ方が無難、ということである。

 だから、元巨人の左腕投手、高橋一三氏が亡くなったときの読売新聞の7月16日付のスポーツ面の「評伝」にはガッカリしてしまったのである・・・

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岡江昇三郎のWEEKLY COLUMN

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プロ野球観戦歴44年のベースボールライター・岡江昇三郎の連載コラム。

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