他球団の四番とは背負っているものが違う。今年、本塁打44、打点110でキャリアハイをマークする背景には、主将としての責任感があった。“自分が打たなければチームが沈む”という環境。実際に今季、幾度もそのバットでチームの窮地を救ってきた。筒香がチームを思う気持ちは本物だ。本人は絶対に語りたがらないエピソードも含め主将としての姿、言動を担当記者が伝える。 文=湯浅大(サンケイスポーツ)、写真=BBM 勝利に飢えた男
この男の覚醒がなければ、
DeNAの球団史上初となるクライマックスシリーズ(CS)進出はなかったであろう。
筒香嘉智、24歳。ともにキャリアハイとなる44本塁打、110打点(9月29日時点)を挙げるなど、ハマのモンスターとして四番に君臨し、何度もチームを勝利へと導いた。

9月23日、ペナント2位を争う巨人との一戦[東京ドーム]では、7回に41号満塁弾、9回にも42号ソロを放ち、打撃2冠獲得へ前進/写真=内田孝治
9月19日、CSへのクリンチナンバーを「1」として迎えた
広島戦。DeNAは3対1で勝利し、雨にもかかわらず本拠地・横浜スタジアムを埋め尽くしたファンの前で、歓喜の瞬間を迎えた。筒香は6回に3点目となるダメ押しのタイムリーを放ち、勝利に貢献した。
「感想ですか?CSが決まったな。ただ、それだけです。僕たちはシーズンが始まってから、優勝することを目標に1戦1戦、戦ってきた。優勝がかなわない状態になったけど、そこから何も変わることなく、1試合1試合やってきた結果がCS出場という結果になったということです」
そっけなく聞こえるコメントは偽らざる本音。勝利に飢えた男にとっては、優勝を果たせなかった現実のほうが大きい。
「うれしくないといったらおかしいですけど、いつもの試合を勝った後と同じです」
さしづめ、1998年以来となる日本一へ向かうための、最低限の“ルート”は確保した、といったところだ。
10年連続Bクラス、しかもそのうち7度が最下位。そんな“常敗”軍団を多くの勝利に導いたのが筒香のバットならば、戦う集団に変えたのは主将2年目を迎えた筒香のキャプテンシーだった。
昨年12月、ドミニカ共和国で行われたウインター・リーグに初めて参加した際、強く感じたのは「野球を楽しむ」こと。そこにいる選手の大半はメジャー・リーグを目指し、人生をかけた試合に臨んでいる。チームメートでさえライバルである状況だが、全員が勝利を目指して明るく声を出していた。
「後ろを見ることはなくなりました。常に、何事も前向きに考えるようになった」
筒香はプレー以外での大きな収穫を得て帰国した・・・
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