2013年の第3回WBCには野手最年少でメンバー入りし、6試合に先発出場も、悔しい敗戦を経験した。以降、研鑚を重ねた日本が誇る右の大砲は、14年に熾烈なタイトル争いを制して、打点王を獲得。四番打者に求められる勝負強さに磨きをかけた。プレミア12を11月に控える今シーズンも、本塁打と打点を量産中。小久保裕紀監督が信頼を置く日本の四番・中田翔が、新たな世界大会への思いを語った。 取材・構成=坂本匠 写真=高原由佳、BBM 1本出たらもう1本 1打点ならもう1点
稲葉篤紀、
金子誠が2014年限りで現役を退き、
小谷野栄一は
オリックスへ、
大引啓次は
ヤクルトへと活躍の場を移した。シーズン開幕前には、急激に若返ったチームを心配する声が大半を占めたが、60試合を終えた時点で首位
ソフトバンクをゲーム差1.0で追う2位と好位置をキープ。そんな好調ファイターズを支えているのが、勝負所でこそキラリと輝く働きを見せる、ニッポンの四番・中田翔である。
──前半戦60試合を戦って本塁打19本はリーグトップ、1試合1打点ペースの打点57を叩き出しています。オフに体を絞ってシーズンインしたそうですが(※自主トレ期間中に10キロの減量に成功)、パワーはそのままに、スイングにはキレ、鋭さが増したように感じられます。
中田 今までにないくらい、ホームランも打点も順調に数字が伸びてくれていますね。でも、逆に、さまざまな部分で、『まだまだできるな』と思うことの方が多いですこれで十分だと満足してしまったら、それ以上の成長はないですし、1本出たらもう1本、1打点挙げたらもう1打点と思う気持ちが強い。
特に打点に関しては、チャンスをつぶしている場面が結構あります。ロボットではないので、10割打てるわけではないことは分かっているんですが、でも自分の状態がどうであれ、ここは何とかしなければいけない、というシーンはかなりありました。最低でも犠牲フライで1点を取りにいかなければいけないのに、三振をしてしまったり、意味のない内野ゴロを打ってしまったり。そういう凡打が結構、(心に)残っているので、同じ失敗を繰り返さないようにしないと。
──キャリアハイのペースで数字を積み重ねていますが、それでも細部まで見つめて、やれることを一つひとつクリアしていく、と。
中田 そうですね。それに、僕だけに限らず、プロ野球選手の誰もが経験していることだと思うんですが、どれだけ調子が良くても、気を抜いてしまうとその後に痛い目を見るのは分かっているので。考えたくもないですが、もしここで何かがあって、チームを離れなければいけない状況になり、シーズンが終わってしまったら、今の数字は何の意味もないものになってしまうこともある。僕も今年で8年目、面白いように打てる時期だったり、その逆も経験しています。だからこそ、怖さが分かるんですよね。極端な話、この60試合時点でホームラン40本、100打点を稼いでいるとなったら、その先も楽しみでしょうがないですけど(笑)、そういそういうわけにもいかないので、この1試合、1打席を大事にしていこうと。そういう思いで常にプレーしています。

6月9日の巨人戦(札幌ドーム)では、ポレダから滞空時間の長い先制2点アーチ&タイムリーの全3打点で3対2の勝利に貢献。同郷の新人で先発・有原航平の3勝目を後押し
──
西武の
中村剛也選手を抜く19号本塁打でランキング1位に躍り出た6月9日の巨人戦(札幌ドーム)の試合前には、侍ジャパンで打撃コーチを務める稲葉篤紀(北海道
日本ハムSCO)さんにアドバイスを求めていました。お立ち台では「バッティングがヤバかったので、教えてもらいました」と。さっそく実践したそうですが、そもそも「ヤバい」部分と、稲葉さんの教えとは?
中田 自分の感覚と体がマッチしていないことですね。自分の考えではしっかり振れていても・・・
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