3月2日、チームに激震が走った。広島の正捕手、打線の核として地位を確立し、昨年プレミア12でもベストナインに選ばれる活躍を見せた坂倉将吾に、右手中指末節骨骨折が判明。復帰まで2カ月以上を要するとの見込みで、開幕戦出場は絶望的だ。開幕まで1カ月を切った時期の試練を乗り越えるカギは、若手か、ベテランか、その両方か――。 写真=兼村竜介 
坂倉、石原不在の捕手陣で奮闘する清水。打撃も実戦で結果を残しつつある
攻守の要を欠くこととなった。昨季、シーズンを通して打撃不振に悩まされた広島で、坂倉将吾の打率はチーム3位の.279。本塁打12本はチームトップだった。主に五番を打ち、先発マスクはチーム最多の64試合。オフには右肘のクリーニング手術を受け、順調な回復を見せていただけに、坂倉本人にとっても痛恨の離脱となった。
春季キャンプ最終日の2月26日の練習中に右手中指を負傷し、腫れが引かなかったため3月2日に広島市内の病院で検査したところ、骨折が判明。同4日に手術を受けた。同8日に広島県廿日市市の大野練習場でリハビリを開始し、患部に影響のないキャッチング練習や軽めのティーバッティングなどに取り組んだ。
チームの司令塔の離脱を受け、同3日、二軍からベテランの
會澤翼が一軍に緊急合流。「守備も打撃も、自分のやれることはしっかりやってきた」と強調した。
新井貴浩監督も「映像でもチェックしていて、いい安打を打っていたし、体も動いている」と會澤を評価。「サク(坂倉)のところはベテランの力も借りながら、みんなで頑張っていく」。総力を結集させて臨む考えを示した。
若手捕手の成長にも期待が懸かる。高卒3年目の
清水叶人は、今季初めて一軍で完走した春季キャンプから打撃で成長をアピール。同5日の
DeNAとのオープン戦(横浜)では途中出場ながら、2打数2安打、6回には二死二、三塁から勝ち越しの適時打を放った。翌6日の
ロッテとのオープン戦(ZOZOマリン)では先発マスクをかぶり、2打数1安打。7回から清水に代わってマスクをかぶった高卒4年目の
高木翔斗も安打を放ち、チャンスにアピールを続けている。育成から支配下に上がって3年目の
持丸泰輝も、春季キャンプは一軍で鍛錬した。

3月6日のロッテとのオープン戦[ZOZOマリン]で安打を放った高木。チャンスをつかみたい若手捕手の一人だ
さらに、1月に左手関節を手術し三軍調整中の
石原貴規が、3月中に二軍での実戦復帰が見込まれている。昨季は30試合で先発マスクをかぶり、坂倉に次ぐ第2捕手に定着かとも思われた。復帰からの競い合いで、再び地位をつかむか。
ベテラン捕手としては、會澤に加え、15年目の
磯村嘉孝もいる。経験が重要となる捕手のポジションにおいて、ベテランの力が、坂倉不在の穴を埋めるには欠かせない。
一方で、投手陣では左右両エースも、この緊急事態に立ち上がる。
大瀬良大地は今後若い捕手とバッテリーを組むことが増えることを見越し、「ある程度はこっちから引っ張っていかないと」とサポートを決意。
床田寛樹も「しっかり会話して、お互いに成長していければ」と、より一層コミュニケーションを深めていく考え。
実際、3月6日のロッテとのオープン戦に先発登板した床田は、バッテリーを組んだ清水と試合中や試合後に言葉を交わす時間を持った。構えや配球などについて助言をするほか、連携を強めるための心掛けも。同日は、清水のサインに首を振らずに投げた。完全に納得はしていなかったとしても、「僕も、どちらかと言うといろんな球種を投げたいタイプなので、『それも面白いな』と」。若手の奮闘をポジティブな姿勢で受け止めて、新たなバッテリーの関係性を築いていく。
チームでは、キャンプ中に
黒原拓未や
アドゥワ誠、オープン戦で新人の佐々木泰と負傷離脱者が続く。しかし、この状況は決して広島に限ったことではない。戦力の穴は、代わりの一人で埋められるほど単純ではない場合もあり、いかにカバーできるかで総合的なチーム力が問われることとなる。