阪神甲子園球場では、センバツ高校野球大会の熱戦が展開されている。大阪勢は98年ぶりに出場校ゼロ。大阪桐蔭高は昨年10月の近畿大会1回戦敗退以降「夏一本」を照準に、猛練習を重ねている。すでに「プロ志望」を明言している右腕2人は切磋琢磨し、心技体を高めている。 取材・文=岡本朋祐 写真=宮原和也 
大阪桐蔭高は昨春まで5年連続で春のセンバツ甲子園に出場していた。今春は出場を逃し、活動拠点の生駒グラウンドで腰を据えて練習している
「脱力」がテーマ
春4度、夏5度の甲子園優勝を誇る名門・大阪桐蔭高をなぜ、志望したのか。2年秋の新チーム以降、投手で主将を託されている
中野大虎は、思い出を語る。
「母(久美さん)の高校時代の先生が大阪桐蔭に勤めていた関係で2012年夏の甲子園をアルプス席で観戦したそうです。春夏連覇を遂げた
藤浪晋太郎さん(マリナース傘下)の代ですね。記憶にないですが……(苦笑)。あとから『大阪桐蔭』だと聞き、心がざわついたんです。このユニフォームを見て日本一を取るには、この学校しかないと強く思いました」
大虎。かつて祖父が、阪神の私設応援団として活動していたのが由来だ。「だいぶ気に入っています(笑)。大きい虎ですからね」。9歳上の兄はソフトボール、野球、7歳上の姉もソフトボールに触れ、幼少時から白球に囲まれた生活だった。両親は元アスリート。特に気合と根性の母・久美さんの影響力が大きく「負けん気の強さ。自分がやらなアカン、という選手としての心構えが擦り込まれています」と、好きな言葉は「一生懸命」だ。
「ベストを尽くしたところで、限界を超えたところで、初めて見える景色がある。一生懸命やらんことには、始まらない」
2年春のセンバツで8強進出に貢献し、同夏の甲子園1回戦(対興南高)では4安打完封。下級生とは思えない、堂々としたマウンドさばきが印象的だった。最速149キロの真っすぐでグイグイ押し込むだけでなく、変化球を交えた強弱も可能である。優れたゲームメーク術。西谷浩一監督が大事な一戦を託したくなる気持ちも理解できる。
「好きな投手は阪神・
藤川球児監督です。2006年のオールスターゲーム。
西武・
カブレラ選手の予告での全球直球勝負は、強烈な印象として残っているんです。まさしく、分かっていても打てない真っすぐ。自分のボールは藤川さんの『火の玉ストレート』を目指す上で『魂のストレート』と気持ちを込めて投げています」
力一辺倒では相手も当然、研究してくる。主将として臨んだ昨秋は大阪2位で近畿大会出場も、1回戦で滋賀学園高に屈した。先発した同学年の153キロ右腕・
森陽樹を、中野が6回途中から救援。追加点を与えなかったが、力及ばず敗退。チームとしては3季連続、センバツは6大会連続出場を逃した。冬場のテーマは「脱力」。投手指導を担当する石田寿也コーチとの二人三脚で、取り組んできた。
「体の使い方を学んでおり、力感なく、強いボールを投げることを意識しています。球速がアップし、出力が上がっていけばケガのリスクが高まりますし、1回から全力では、9イニングは持たない。森と2人で1試合を勝ち切ることも必要ですが、完投能力も追い求めています」
勉強熱心である。読書が趣味。活字からドジャース・
大谷翔平の考え方、睡眠に必要なこと、技術向上のための野球理論、ストレッチなどを学んでいる。すべてを野球につなげる、意識の高さである。
卒業後の進路は当初、大学進学も視野に入れていたが・・・
この続きはプレミアムサービス
登録でご覧になれます。
まずは体験!登録後7日間無料
登録すると、2万本以上のすべての特集・インタビュー・コラムが読み放題となります。
登録済みの方はこちらからログイン