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【MLB】さらにハイレベルの二刀流へ 進化を止めない大谷翔平

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今季から投手でも出場する大谷。キャンプでは直球のみで球速は92~94マイルと順調な仕上がり。2度目のトミー・ジョン手術からの成功例は低い中、どんな成績を残すのか。常に高みを目指す二刀流の今シーズンの活躍が今から楽しみだ


 大谷翔平の投手としての復帰が徐々にではあるが順調に進んでいる。キャンプでの話題はノーワインドアップを試していること。「バッティングもそうですけど、常に変化を求めていきたいと思っているので。その中の一つかなと思います」と言う。実戦でも続ける考えで「今のところはその予定ですけど、強度が上がったときにどういう反応が来るかによって決めたいと思います」と説明する。

 ドジャースのマーク・プライアー投手コーチは「投球動作にリズムや躍動感があるのはいいこと。投球の流れやタイミングを良くし、結果的に腕への負担を減らすことにつながると思う」と賛成する。

 3月初め現在、ブルペンでは直球のみを投げており、球速は92~94マイル。常にタブレット端末でデータをチェックする。「投げている感覚とフィードバックをもらったときのデータがどういうふうに一致しているかが大事だと思うので。今のところ良い感じできていますし、もうワンステップ上げたときにデータがどういうふうにブレるかをチェックしていきます」と語る。

 大変なのは2度目のトミー・ジョン手術からの復帰は成功例が少ないこと。先発投手だとカブスのジェームソン・タイオンとレンジャーズのネイサン・イオバルディくらいか。昨シーズン、ドジャースのウォーカー・ビューラーはポストシーズンで好投したが、公式戦は16試合に先発して1勝6敗、防御率5.38だった。加えて二刀流の大谷は打者としてもドジャースの主砲で、一番・DHで毎日プレーしながら、予定される5月の復帰に向けて、投手としてのスタミナを再構築していかねばならない。こんなことを成し遂げた選手はほかにいない。エンゼルス時代の大谷だけだ。

 だから通常ならトミー・ジョン手術からの復帰は球団のメディカルスタッフが主導するが、ドジャースは大谷と話し合いながら進めるという。アンドリュー・フリードマン編成本部長は「前例のないこと。体の状態や感覚を尊重しながら、常に対話を重ねる必要がある。幸いなことに、大谷は自分のコンディションを細部まで把握している選手。それを踏まえて、われわれは彼とともに最適なプロセスを探っていく」と言う。

 通常、投手は、マイナーでのリハビリ登板で調整するが、大谷はチームを離れられないから、メジャー球場で試合数時間前にチームメート相手にシミュレートゲームで投げることになる。だがこれについても大谷は「前回の手術のときもそういう感じでやっているので、初めてではないし、自分のフィーリングが大事かなと思います」と説明した。

 印象的なのは、後ろ向きな考えは一切持たず、投手としてのさらなる進化を誓っていることだ。ピッチングでは新しいスタイルを模索するのか、良かったときの自分に近づけていくのかと聞かれると「ケガを恐れてパフォーマンスを落とすことはない。手術前にも言いましたけど、93~94マイルくらいだったらある程度(じん帯が)切れていても痛みなく投げられた感覚はあった。そこで満足することなく、どれだけうまくなれるかだと思うので」と言い切る。

 24年は打者として著しい進化を遂げたように、次は投手でさらに上を目指す。よりハイレベルな二刀流へ、大谷は上しか見ていない。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images

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メジャーから発信! プロフェッショナル・アイデアの考察[文=奥田秀樹]

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