10月23日に巨人が会見を開き、松井秀喜監督の就任を電撃発表した。契約期間は3年で、推定年俸は2億円。背番号は恩師である長嶋茂雄監督が最初に着けた「90」に決まった。常勝軍団の復活と新たな黄金時代を創出する決意を語った新指揮官は、10月30日の秋季練習からチームへ合流する。 写真=川口洋邦 
待望となる監督就任。松井新監督は会見で自らの思いを語った
ついにこの時が訪れた。巨人は10月23日に都内のホテルで会見を開き、新たな指揮官に松井秀喜監督が就任することを発表した。
報道陣約120人が集結し、各局が会見を生中継する中、ともに登壇した山口寿一オーナーが「ジャイアンツの新しい監督は松井秀喜監督となります。背番号は90番。契約の年数は3年です」と正式に就任を告げると、松井“新監督”は約8分間にわたるスピーチで“ジャイアンツ愛”を口にした。
「今日は満面の笑顔でふるさとに戻ってきたつもりです。これからのジャイアンツ、強いジャイアンツ、そして素晴らしいジャイアンツの組織のスタート地点に携わらせていただけることをうれしく思います。皆に愛を持って接し、力強い、光り輝くジャイアンツになるよう、少しでも力になりたいと思います。私自身がすべてにおいて先頭に立ち、模範になれるよう頑張ってまいります」
阿部慎之助前監督が5月に電撃辞任。交流戦からは
橋上秀樹監督代行が指揮を執ったが、
阪神と優勝争いを繰り広げながら最後は振り切られ、シーズンは2位でフィニッシュ。クライマックスシリーズ・ファーストステージでも
DeNAに敗れた。2026年の戦いが終わって以降、新たなジャイアンツの指揮官が誰になるかは球界全体の関心事だったが、国民的スターの帰還という形で決着した。
背番号は現役時代の「55」ではなく「90」に決まった。恩師である長嶋茂雄監督が初めて指揮を執った1975年から6年間、背負った番号だ。「長嶋監督は昨年、89歳でお亡くなりになった。今年は(存命なら)90歳、その年に90番を着ける」と思いを明かし、「現役の最後は35番を着けていた。(55と)足すと90」とさらなる理由も挙げた。「55番を着けるとノスタルジーに浸ってしまう」と感じていた中で、「90」を背負うことは必然だった。
昨年の6月3日、長嶋さんが死去した翌日にアメリカから緊急帰国して自宅を弔問した際、「長嶋監督と生前、約束していたことがある」と語った。あらためてその真意を問われると、「あの発言でいろいろな臆測を呼び、チームにすごく迷惑を掛けてしまった。言うべきではなかった」と苦笑いを浮かべ、「私の中では自主撤回している。ご自由に考察してください」と言葉を続けた。
それでも、「本当はこの姿を長嶋監督にも見ていただきたかった」と思いを率直に口にした。長嶋さんが存命ならどんな言葉を掛けられたと思うかを問われると、「『遅いよ!』じゃないですかね」と笑い、「誰よりもこの瞬間を楽しみにしてくださっていたと思います」と感慨にふけっていた。
V9以来の黄金時代へ
シーズン終了後、山口オーナーから「ジャイアンツにとって一つの危機だった年。乗り越えていくには松井監督にお願いするしかない」という熱烈なオファーを受けた際は、「正直、うれしかった。どこにいても心の中にジャイアンツがあった」と言う。それでも「実際に引き受けるときは悩んだ」。最優先の家族はアメリカで生活している。その家族の後押しを受けながら、1週間の熟考の末、覚悟を決めた。
ただ、待望の監督就任とはいえ、平坦な道程が待っているわけではない。何より監督経験がないことを不安視する声は多い。「そこが12球団の監督の中で一番劣っている部分だと自覚している」と話し、自身の強みを聞かれても「ないでしょ。経験がないんだから。ゼロ。それを自分で自覚しないといけない。だから選手と一緒に伴走して、少しでも選手を押し上げながら、一緒に自分が経験と勉強をしていかなければならない」と自らの立ち位置を冷静に分析している。
だからこそコーチ人事については「一番最初の、大事な作業」だと考えている。「現時点で1人だけ声を掛けている」という新コーチ候補を含め、どんなスタッフで指導体制を固めていくのかは最初の注目点になる。
その上で、常勝軍団の復活を託されることになる。今季は2年連続のV逸となり、日本一からは14年間も遠ざかっている。だが、新監督はさらに広い視野で「ジャイアンツの復活」をとらえている。
「ジャイアンツはV9以降、日本一連覇もおそらくないと思う。本当の意味での黄金時代は、V9以来、来ていないと私自身は思っている。その間、80年代のライオンズや、ここ10数年のホークスのような時代をまったくつくることができていない。これからジャイアンツに新たな黄金時代が訪れるように、今日ここからスタートしていきたい」
そのためには環境づくりがもっとも重要になる。現役引退後も
ヤンキースで選手育成に携わってきた中で、MLBとNPBの環境の違いは熟知している。「育てるのではなく、選手自身が自分で成長していくということを逆に教えていきたい」と指導理念を口にすると、「ジャイアンツ全体でその環境をつくり、選手がしっかり成長できるように頑張っていきたい」と言葉を続けた。
「ゴジラ旋風」への期待
会見が行われたのはドラフト会議の翌日。話題は強行指名で見る者に衝撃を与えた横浜高の高校生NO.1右腕、
織田翔希にも及んだ。
1位から4位までが高校生の指名という結果を踏まえ、「来年の戦力的なところはお構いなしに、育成に全振りをして、とてもすがすがしい気持ち」と冗談を交えながら、「世界一のピッチャーになる可能性のある選手と、もしかしたら契約できるかもしれないというチャンスをもらえた」と期待をかけると、「久しぶりにドラフト会議を見ていて、ジャイアンツでゾクッとした」と好印象を口にした。
それではグラウンドの上ではどんな野球を見せていくのか。「まずは確率が高いものを大事にしていきたい」と語る。自身が現役時代に屈指のスラッガーだったことをあえて引き合いに出しながら、「守備、走塁はできれば100%にしたい」とディフェンス面に言及した。選手たちにはそのための意識を求めていくことになる。毎試合毎試合、1球1球、一瞬の状況判断、そのための準備。「打って点を取る、投げて抑えるのは勝敗にすごく影響するところ」と認めながらも、まずは選手が自分でコントロールできるものについて100%を求めていく。それがすべての大前提になっていく。
あらためて第21代巨人軍監督に、ジャイアンツの枠を超えたスーパースターが就任したことで、日本中が沸いた。10月30日の秋季練習からチームに合流することになるが、果たして松井新監督がどのように伝統球団を再興し、新たな黄金時代へ導いていくのか。かつて長嶋茂雄が成し遂げたように、“松井ジャイアンツ”がどうプロ野球を変えていくのか。野球ファンの誰もが、新たな「ゴジラ旋風」が巻き起こることを待ち望んでいる。

さっそくユニフォーム姿を披露。10月30日の秋季練習からチームに合流する