明るく陽気なキャラクターで、すぐにチームに溶け込んだ。一方で、投げることに関してはプロの厳しさも味わい、ルーキーイヤーは悔しさをこらえ切れなかった日々も。この世界で生き抜くために必要なのは、強さ──。若さゆえの勢いで、大胆不敵に攻めていく。 文=菅原梨恵 写真=湯浅芳昭、BBM 心身両面での課題
何もかもが初めてという中で、新しい自分とも出会った。ドラフト2位で入団した岩井俊介は、ルーキーイヤーの昨季を開幕一軍でスタートし、日本シリーズで締めくくった。レギュラーシーズン登板15試合で1勝1敗2ホールド1セーブ、13回を投げて10奪三振、防御率3.46という数字以上に、密度の濃い1年だったことは間違いない。
「えー、ルーキーイヤーを振り返りまして……」。持ち前の明るさに満ちた口調でシーズンをなぞる。やはり1年目とあって、記憶に残る出来事は数知れず。その中で右腕にプロとしての気づきをもたらしたのは、最初に“壁”にぶち当たったときだった。
開幕一軍をつかみ4月4日の
ロッテ戦(PayPayドーム)でプロ初登板を果たすも、翌5日に出場選手登録を抹消された。
倉野信次投手コーチ(チーフ)兼ヘッドコーディネーター(投手)(以下、倉野投手コーチ)から指摘されたのは、岩井の悪いクセだ。
「投球フォームの問題で、体の開きが気になると言われて。体が元気なときは『どんどん開いてもお前は投げられる』と言われたんですけど、『疲れたときがキツいから直してこい』と。今のままだと、疲れてきたときにボールに力が伝わりづらい。それに(体が)開くと(ボールの出どころが)バッターからも見えやすいですし」 そこから始まったフォームの見直しは、
寺原隼人二軍ファーム投手コーチ(現・三軍投手コーチ[チーフ])との二人三脚だった。
「2人でずっとやってきて、だいぶ良くなりました」。
それでも、完璧には直すのが難しいのが“クセ”というもの。
「今でもまだ自分のモノにできてないというか。今度は“若田部塾”(若田部健一投手コーチ[ブルペン]の下)で日々、取り組んでいます。体の開き自体はもうだいぶ意識しなくても真っすぐにはなったんですけど、股関節が回り切ってないんですよ。直す前はやっぱり体が開いている分、股関節がグイッといってたんですけど。そこの特訓をしています。バリキツいです(苦笑)」。
それでも充実感がにじむのは、少しずつでも進歩を感じているからだろう。そして、迎える2025年シーズンへの意欲ものぞかせる。
また、昨季、二軍で再調整に励む中では精神面での変化も求められた。
「(二軍で)ボコボコに打たれたときに落ち込んだりしていたんですけど、途中から意識というか、気持ちを変えて。ちょっと弱気になっていた部分があったんですけど、それじゃダメだなと」 参考になったのはYouTubeで見た、ある投手のインタビュー。
「誰だったかは本当に忘れちゃいました(苦笑)」というのがなんとも岩井らしいが、気の持ちようが投球にもたらす影響は大きかったようで、「もっと早く気づけたらよかったなと思って」。それでも、今後に向けた確かな足掛かりになっている。
全国大会と過去一の練習
着実に成長を続ける右腕にとって、プロ野球選手は小学1年生で野球を始めたときからの夢だった。ただ、一度だけ、あきらめかけたことがあるとも明かす。
「京都翔英高に進学して、1年生の秋には背番号『1』をもらったりもしていたんです。でも・・・
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