ドラフトは予想するから面白い。 ここからは、元巨人チーフスカウトの中村和久氏が12球団の戦力事情を分析した上で、現時点での1位指名選手を早くも決定。 さらには上位指名候補までを大胆にシミュレーションしていく。 信じるか信じないかは、あなた次第――。 ※球団の並びは各リーグ昨季のウエーバー順
セ・リーグ 横浜DeNA 松井裕樹[投手・桐光学園高] 阪神 森友哉[捕手・大阪桐蔭高] 広島東洋 松井裕樹[投手・桐光学園高] 東京ヤクルト 松井裕樹[投手・桐光学園高] 中日 小林誠司[捕手・日本生命] 読売 森友哉[捕手・大阪桐蔭高] パ・リーグ オリックス 松井裕樹[投手・桐光学園高] 千葉ロッテ 吉田裕太[捕手・立正大] 東北楽天 松井裕樹[投手・桐光学園高] 福岡ソフトバンク 松井裕樹[投手・桐光学園高] 埼玉西武 松井裕樹[投手・桐光学園高] 北海道日本ハム 松井裕樹[投手・桐光学園高] 各球団の戦力事情と思惑が交錯して… 投げるたびに評価を上げ、松井裕樹(桐光学園高)の成長度は加速するばかり。ドラフト1位入札では「松井、松井……」と連呼されるはずだ。その数は「最大8球団」と予想するが、そこには“戦略”が存在する。

▲松井裕樹[桐光学園高]
今年のドラフトでは各カテゴリーに有望な捕手がいるのが大きな特徴である。その中で最も注目を集めているのが森友哉(大阪桐蔭高)。いの一番で手を挙げるのは阪神だろう。興行面から考えても、藤浪との甲子園優勝バッテリーで売り出すことのメリットは計り知れない。ただ、一筋縄ではいかないはず。対抗してくるのは巨人か。現在は阿部がいるものの、年齢を考えれば次世代のスターが求められる。森を巡るGT決戦がぼっ発しそうな様相である。

▲森友哉[大阪桐蔭高]
中日は谷繁後、ロッテは里崎後のレギュラー捕手が是が非でも欲しいところ。小林誠司(日本生命)は安定感あるリードが持ち味。吉田裕太(立正大)はパンチ力があり、送球も良い。正捕手が定まらないチームであれば、即スタメンもありそうだ。

▲小林誠司[日本生命]

▲吉田裕太[立正大]
ここでは松井を8球団が重複としたが、「松井回避で単独指名」という決断も大きな分岐点となる。次の項では、そうなった場合の新たな選択肢を考えていきたい。
カギを握る5人の本格派右腕 松井に8球団が競合するとしたが、当たり前だが獲得できる確率は1割強。そう考えれば単独指名に切り替え、確実性を求める球団も出てくるだろう。特に先発投手のコマ不足が深刻なヤクルト、DeNA、オリックスは即戦力投手が欲しいはずで、決断する可能性はある。
そうなったときの候補として挙げられるのが、
大瀬良大地(九州共立大)、
杉浦稔大(国学院大)、
白村明弘(慶大)、
浦野博司(セガサミー)、
吉田一将(JR東日本)といった5人の本格派右腕である。特に杉浦はこれまでどこか粗削りだったが、フォームも固まり、コントロールの精度が高まってきている。逆に少し心配なのが白村だ。調子が良くないのか、手投げでこぢんまりとした印象。最速153キロの豪速球を力強く投げるのが持ち味のはず。だが、勝負はこれからだろう。ドラフト当日に�
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2年前のドラフトでは
藤岡貴裕(東洋大、現ロッテ)、
高橋周平(東海大甲府高、現中日)に指名が集まった中、ソフトバンクが
武田翔太(宮崎日大高)を一本釣りし、実際に成果を挙げている。こんな独自路線が実を結ぶケースが今年も見られれば、さらに興味深いものとなる。
また、捕手に話を戻せば、森、吉田、小林のほかにも有力選手が存在する。
石川亮(帝京高)は1年夏からレギュラーを獲得し、打撃フォームがホームランバッターのそれになってきた。高校生捕手では「左の森、右の石川」というべき存在にのし上がってきている。野手として育てても面白い存在だ。レギュラー捕手の“高齢化”に伴い、この部分を補強ポイントに挙げる球団は多く、場合によっては「捕手→捕手」の外れ1位指名があるかもしれない。それ以外でも、旧チームで
東浜巨(ソフトバンク)とバッテリーを組んでいた
嶺井博希(亜大)の評価が高い。高校生では甲子園で活躍を見せた
喜多亮太(敦賀気比高)、
若月健矢(花咲徳栄高)、
内田靖人(常総学院高)が将来ある好素だ。
万能型内野手と和製大砲の評価は? ベテランが内野陣をめる中日やヤクルトは、イキのいい若手内野手が欲しいところ。そこで注目したいのが
河合完治(法大)である。故障が多く、東京六大学リーグでこれまで満足のいく活躍ができていなかったが、この春のリーグ戦では勝負強い打撃を随所で見せ、その評価は急上昇している。甲子園優勝時にはサード、そして現在はセカンドと、内野はどこでも守れるセンスの良いユーティリティープレーヤー。すでに一軍半の実力は兼ね備えており、チームとしてはベンチに置いておきたい貴重な存在ではないだろうか。
また、二刀流の
岡大海(明大)も要チェック選手の1人だ。現在は打撃に重きを置いており、投手としての出番は少ない。各球団がこれをどう評価するか。そのほかでは
山川穂高(富士大)、
陽川尚将(東農大)、
中嶋啓喜(明大)らが右の和製大砲で、どのチームにもニーズがある。
高校生内野手では
園部聡(聖光学院高)が、外野手では
上林誠知(仙台育英高)が春のセンバツでその打力を発揮した。遊撃手の
渡邉諒(東海大甲府高)は2年夏に攻守走のバランスの良さを見せたが、さらなるアピールなるか。これらの名が、上位で消える可能性は大いにある。
今年度の新入団選手は技術評価、実績面で高い数値を残していた選手が多く、開幕直後から期待どおりの活躍を見せている。菅野(巨人)は例外として、藤浪(阪神)、小川(ヤクルト)、則本(楽天)、鍵谷(日本ハム)、野手では金子(西武)がその筆頭格。また、二刀流の大谷(日本ハム)も投打両面で豊かな将来性を見せている。彼らと比較すると、今年の候補選手は松井以外、実績に乏しいと言わざるを得ない。だからこそ、スカウトによる視察情報の精査がいつも以上に求められる。見る側の力量、総合力が問われるドラフトとなりそうだ。本番での“答え合わせ”が、今から待ち遠しい。