今年のドラフト会議、1位でヤクルトに交渉権が確定した国学院大・杉浦稔大の対談相手は、今季まで同チームで投手コーチを務めた野球評論家の荒木大輔氏。チームの実情をよく知る荒木氏との対談は、これからプロの世界に飛び込む右腕にとっても、貴重な機会となった。 構成=菊池仁志 写真=大泉謙也 不安も皆無、恵まれた環境 神宮球場は4年間、研鑽を積んだ場所だ。東都リーグ一部通算22試合登板で積み上げた白星は12。その間2度、入れ替え戦も経験し、負けられない戦いの緊迫感を体感した。そしていま杉浦は、神宮球場を本拠地とするヤクルトへ、栄えあるドラフト1位指名を受けて進む。 荒木 ドラフト1位、おめでとう。ヤクルトに決まったけど、どんなイメージを持っているかな。
杉浦 すごくアットホームな球団だと思っています。家族的な雰囲気というか。ファンの方々とも近くて、親近感があるチームですよね。
荒木 若い選手が多いから。起用に関しても、若い選手にどんどんチャンスを与えて判断するところもある。そういうところでアピールしやすい環境があるチームだとも思うよ。チャンスの多い球団。すごくいいチームに指名されたんじゃないかな。
杉浦 チャンスがあればうれしいですし、1年目からチャンスをしっかりつかんでいきたいと思っています。
荒木 本拠地の神宮球場は大学時代もリーグ戦で使用した球場だけど。
杉浦 すごく投げやすいマウンドだと感じています。
荒木 少し狭いけどね(笑)。
杉浦 そうですね。両翼101メートルにしてはすごくホームランが出やすいとは思っていました(実際は97.5メートルであることがシーズン後に判明)。
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▲慣れ親しんだ神宮球場を本拠地とするヤクルトに進む杉浦。大学時代に成し遂げられなかった優勝に挑む
荒木 そこは投手にとっては難しいことなんだけども、お客さんとの距離も近いし、バックの先輩たちも温かい人たちだし。国学院大の先輩である谷内(亮太、13年ドラフト6位入団)がいることも力強いよね。
杉浦 谷内さんは学年が1つ上の先輩です。一緒にプレーしていた先輩が、プロでも同じチームにいることはありがたいです。谷内さんにもいろいろと聞いてみたいです。
荒木 小川監督も選手たちに気を使ってくれる方で、コーチ陣も選手のことを一番に考えているから。もちろん、そこに甘えてはいけないんだけども、全然心配はいらないと思うよ。分からないことがあれば、聞けばみんな教えてくれるし、解け込みやすいチーム。1位で入るわけだから、ケガさえなければキャンプでは一軍でスタートすると思うけど、自分のペースをしっかりつかむまでが大事。その前に体作りだけしっかりやることだね。
杉浦 自分の力が通用するかは投げてみないと分からない部分で、その点は若干の不安みたいなものがありますけど、環境面については荒木さんもおっしゃっているようなイメージを自分も持っているので、そこに不安はありません。
荒木 通用するか、しないとかはあんまり考える必要はないと思うよ。自分自身がやってきたことが評価されて、ヤクルトからドラフト1位指名されたわけだから。そこに自信を持って、最初はどんどん投げ込めばいい。それがすぐなのか、時間が経ってからなのかは分からないけど、どこかでつまずくことが出てきたときに、あらためて練習すればいいわけで。その課題も監督、コーチ、先輩たちが声を掛けてくれたりするし、アドバイスもしてくれるはずだから。
より明確になった将来 187センチの長身にして、体重はわずか67キロしかなかった高校時代。プロ志望届を提出したが、朗報は届かなかった。しかし今、MAX149キロのストレートに、変化球はカーブ、スライダー、スプリット・フィンガード・ファストボールを操る上、高い制球力も身につけた。それを築き上げたのが大学での4年間の取り組みだ。 荒木 帯広大谷高時代、プロ志望届を出したけど、指名されなかったんだって?
杉浦 かかる感じもなかったんです(苦笑)。万が一あったとしても育成での指名とかだったんでしょうか。自分でもそれほど自信もなくて。
荒木 それでもプロに行きたかった。
杉浦 高卒で行きたいと思っていました。でも今考えると、大学に来て良かったって思います・・・
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