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▲練習試合解禁週に早速、今年の第1号を放ち、高校通算本塁打を57に伸ばした



取材・文=谷上史朗 写真=松村真行

 練習試合解禁2日目の3月9日。滋賀学園高戦の初回、一死二塁から2014年の第1号は飛び出した。初球は外へ勝負を避けたようなボール、2球目は一転インコースへ厳しい真っすぐでストライク。カウント1─1からの3球目、高めに入ってきたスライダーを見逃さなかった。ケタ違いのパワーを伝える鈍い衝撃音を残した打球はあっと言う間に上野球場のレフトフェンスを通過。通算57号でドラフトイヤーを順調に滑り出した。

「打った瞬間いったと思いました。まだ実戦が始まったばかりでバットは振れてないですけど、その中で結果が出たのは悪くないと思います」

 前日が5打数2安打、この試合が3打数2安打(2四死球)。この日も楽天日本ハムDeNAのスカウトの顔が見えたが、一発の瞬間もネット裏にある一室の空気は何も変わらなかった。打って当然――。もはやそう見られるバッターになった。

 「これだけ注目されると、ついマイナス点を探したりする方向に目が向きがちですけど、単純にいい打者。一定の対応力もありますし、変化球についていく柔らかさもあります」(日本ハム・芝草宇宙スカウト)

 持ち味はもちろん一発長打。ただ、センバツ関連の記事などでも派手な見出しが躍ったが、本人からはやんわり修正が入った。

「監督から自分にプレッシャーをかけるつもりで『バックスクリーンに放り込みますくらい言って来い!』とも言われて答えたりもしたんですけど……。ちょっと作られたイメージで。実際には確実性を求めて、守りもしっかりして、打つだけの選手と思われたくない。ここが一番です」

 この先、周囲の期待と本人が望むものとの間で苦しむこともあるだろうが、これも多くのスラッガーが背負ってきた宿命。そのギャップ、葛藤の中で何を見せるのか。「あと10日。ここから普通に上がっていけば自分の力は出せるはず」

 華やかな言葉よりもプレーで魅せる、それが岡本和真だ。


PROFILE
おかもと・かずま●1996年6月30日生まれ。奈良県出身。183㎝97㎏。右投右打。小学1年時にカインドで野球を始め、五條東中時代は橿原磯城シニアに所属。3年時にはシニア日本代表の四番を打った経験を持ち、智弁学園高では1年の春からベンチ入り。夏以降は不動の四番としてチームをけん引。昨夏の県大会は準々決勝敗退も奈良北高との2回戦で場外弾と満塁弾を放ち、注目される存在に。秋から副将を務め、近畿大会8強進出。3月9日現在で高校通算57本塁打。

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