初夏を迎えつつある5月のドラフト特集第4弾では、元巨人チーフスカウトと編集部が〝スカウト会議〟を決行し、大胆に中間ランキングを作成。48位までのメンバーを〝選抜〟した。そして、見事に〝センター〟の座を射止めたのが、早大の156キロ右腕・有原航平である。この春は絶対的エースの存在感を発揮し、ここまで3勝。勝ち点3で慶大と東京六大学リーグの首位に並んでいる。5月17日から始まる明大との大一番を控えるこのドラフト注目右腕を直撃した。 ※得点の各項目は20点満点で、5項目で100点満点。同点の場合は相対評価で順位を決定。データはすべて5月11日現在。 ドラフト最注目右腕インタビュー 球速20.0/変化球19.5/制球力18.0/精神力18.5/将来性20.0/合計96.0 
▲自覚はあっても気負いはない。有原は自分が思い描くエース像を追求している
脱力のイメージ ラストイヤーを迎え、ますます難攻不落のピッチャーに近づいている。150キロのストレートと多彩な変化球。頼れる武器を携えて数々の難敵を牛耳ってきた。課題だったスタミナ面でも著しい進境を示しており、この右腕が今ドラフト最注目の存在であることに異論はないはずだ。 ──本誌が選ぶドラフト候補ランキングで1位に輝きました。
有原 そうなんですか(笑)……ありがとうございます。期待されることについては前向きにとらえています。ますます頑張ろうと。

▲バックにはそうそうたる顔ぶれ。ワセダの歴史があって今の自分がいると実感しているという
──現在進行中の東京六大学春季リーグ戦では、3カードを終えて3勝無敗。ここまでのピッチングを自己分析してもらえますか。
有原 開幕カードの法大戦は結果が良かったんですけど(120球、4安打完封勝ち)、2カード目の立大戦では勝ったけど最後に点を取られてしまったので……(9回二死から2失点して降板)。今シーズンは1回戦をすべて完投するつもりで取り組んできただけに悔しかった。もっともっと練習しないといけないですね。

▲今春のリーグ戦ではここまで無傷の3連勝。ここからが本当の勝負となる
──また、立大戦ではこれまで課題とされてきた3回戦で先発しました。
有原 今まで一度も勝っていませんからね。1回戦と3回戦に投げて勝つことを意識して練習してきました。球速もある程度は出ていましたし、ヒットは打たれましたけど(6回1/3を投げて被安打6、1失点)、何とか試合は作れた。今まではあれだけヒットを打たれると、たくさん点を取られていたので。粘れるようになったのが成長した点だと思います。肩が張っている感覚はもちろんありますけど、優勝するためには自分が投げるしかない。覚悟を決めてやっています。
──以前、力を抜いて投げることを覚えたとコメントしていましたが、それはいつからでしょうか。
有原 3年秋の3カード目、立大戦あたりからです。自分にうまくマッチしたので継続していきました。
──その「脱力投法」、具体的にはどんなイメージなのでしょうか。
有原 ボールを離すまでにムダな力を入れず、離すときに一気に。そんなイメージですね。夏のオープン戦で左足小指に死球を受けて骨折してしまったんです。そもそも力が入らなかったということもあるんですけど、その状態で投げたら、意外と良い球が行くようになったんです。
普通にやって先発完投 今追いかけているのは4季ぶりのリーグ優勝。そのためには越えなければならない壁が存在する。そしてその先にあるのはプロの世界。有原自身がさらに上のレベルで戦うために必要なものとは何だろうか。目指す投手像、そして野球選手として思い描く未来像とは――。 ──最速156キロの本格派右腕と呼ばれていますが、球速へのこだわりはあるのでしょうか。
有原 もう意識はしていないですね。球速というより、コントロール良く投げることが大事なので。
──球場の球速表示では9回に150キロが出たこともありました。
有原 何でですかね? リズムが良くなってくると、気持よく投げられるので。そのせいでしょうか。流れに乗っているときは、自然と球速も出るような感じがします。
──そして変化球も多彩です。
有原 今はスライダー、カットボール、カーブ、チェンジアップ、ツーシームを使っています。その中でもチェンジアップが重宝していますね。三振を狙うとき、カウントを整えるときの両方で使っているんですけど、タイミングを外すことによって、ほかの球も生きてくるので。
──投手としてのタイプは?
有原 真っすぐばかりで押すタイプではないですね。いろいろな球種をコーナーに集めて打者を打ち取るイメージです。本格派というよりは技巧派に近いと思います。変化球がうまく使えれば、時折投げる真っすぐも生きてくるので。

▲同じドラフト上位候補である法大・石田健大との投げ合いとなった4月12日の法大1回戦には、日米16球団のスカウトがバックネット裏に陣取った