
強豪校でなくとも通用することを証明するために、プロでも一層の努力を続けていくつもりだ
その瞬間、笑顔がはじけた――。西の最高学府である京大から初のドラフト指名を受けた田中英祐。しかも、千葉ロッテからドラフト2位という高評価だ。将来を約束された超エリートが、あえて飛び込むプロという荒波。その裏に隠された秀才右腕の強き心とは―― 文=椎屋博幸 写真=前島進 研究室の教授と仲間の理解により続けられた
京大工学部では4回生になると専攻する研究室に入る。そこで平日午前10時から夕方5時まで研究をしなければいけない「コアタイム」という時間がある。一方で野球部の練習は午後3時から。「文武両道」を目指す最終学年の野球部員にとって厳しい現状が突きつけられる。
「教授や研究室の仲間に(重要な試合前などに早めに練習に行くことを)理解してもらいました。それで4回生まで野球を続けられました」
田中英祐が所属する研究室は界面(ある均一な液体や固体の相がほかの均一な相と接している境界のこと)の表面力を研究する研究室で、田中は主に、計算をしてシミュレーションする研究を行っている。
一般人には難解な研究であるが、そこは西の最高学府。研究員たちの手助けを受けながら、しっかりと研究を行い、野球との両立を図ってきたのだ。もちろん、運命のこの日も教授から「今日は出席しなくていい」と配慮をもらい、不安を拭い去るかのようにランニングなどの練習をこなして運命のときを待った。
文武両道を実践する。もちろん研究室にはそれに没頭できるだけの道具や研究材料がそろっている。しかし野球部となると、ほかの野球強豪大学と違い、十分なトレーニング器具などの環境が整っているわけではない。田中というプロ野球に指名されるほどの選手が出てきたとしても、環境面で大きな変化が生まれるわけではなかった。
だからこそ田中は「頭でいろいろ考えて、考えて、本当に自分に足りないものは何なのかを見つけながら、今できること(トレーニングなど)を4年間やっていた」
その成果がロッテからの2位指名という高い評価へとつながった。全体では18番目。今回の1位は、早大の主将で内野手の
中村奨吾。つまり2位ながら、投手の中ではトップ評価を与えたのだ。
ロッテは、複数団指名で抽選となった目玉の
有原航平(早大)や
安樂智大(済美高)には振り向きもせず、中村を選択。それは田中が投手部門での今年最高のアマチュア投手だとロッテが判断している証しでもある。
ただ、田中はプロに入ることが終着点ではなくスタート地点だということを理解している。「1年目から1試合でも多く一軍で投げ、そこで自分の投球の課題なり収穫を得ていけたら有意義だと思う。自分の真っすぐと変化球がどれくらい通用するか見極めたい・・・
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