
県岐阜商高の一塁側ベンチには歴代先輩の戦績が貼られている。過去にセンバツは3度制すも、1940年が最後。152キロ右腕が古豪復活を誓う
試合終盤でも衰えない最速152キロのストレートが武器
春はセンバツから──。3月21日に甲子園で開幕する第87回選抜高校野球大会の注目選手は、県岐阜商高を引っ張る主将兼エースへ一極集中する。複数球団のスカウトに見どころを聞いても「高橋が超目玉。実力が抜けている」と意見が一致した。
NPB5球団が視察した1月7日に始動し、同23日の選抜選考委員会を待つ身。152キロ右腕・
高橋純平主将が率いるチームは昨秋、東海大会準優勝と出場は有力の立場にある。
「注目されるのはありがたいですが、その理由が分かりません。(昨秋の地区大会優勝10校が出場する)神宮大会も視察しましたが、どの投手も制球力が良い。自分も大体は投げられますが、まだ精度が低い。変化球を外へ投げ切る技術、125キロでも打たれないことが理解できました」
中学時代に在籍したボーイズでは目立つ存在ではなかった。3年秋のボーイズ岐阜県選抜で142キロを計測し一躍、脚光を浴びている。当時、同校を率いた藤田明宏監督(現副部長)の指導力に惹かれ、名門野球部の門をたたいた。ちょうど入学直前のセンバツでは、藤田監督の長男である左腕・凌司(現立大2年)を擁して8強進出。大阪桐蔭高との3回戦では、前年春から史上初の3季連続優勝を阻む大金星を挙げた。
藤田副部長は「一つの成功を収めた代」という3年生の下で、高橋に英才教育を積ませている。入学直後からメンバー入り。「次の世代は、高橋が中心となってもらわないといけない。そのためにも接する時間を少しでも長くして、吸収してもらいたかった」
1年春から県大会の登板機会が与えられ、145キロを計測。スカウトは“スーパー1年生”の鮮烈デビューに、2年後の「超目玉」としてペンを走らせた。同秋からはエースを託され、2年春にして151キロと大台を突破したものの、同夏も県4強止まり。小川信和監督(当時・部長)に言わせれば「次の1球、次の1球に全力。心と体が折り合わず、ボールが暴れる」状況にあったのだ。
「好投手」から「勝てる投手」へ脱皮したのは、新主将に就任した昨夏の新チーム結成以降。もう一つ、大きな動きがあった。藤田監督の突然の勇退。藤田氏は県岐阜商高、専大、そして同じ岐阜城北高監督と、同じルートを歩んできた小川氏に後進の道を譲った。藤田氏は副部長として指導を続けるとはいえ、チームは動揺。そんな空気を察知した高橋は、人生初の大役にも「自分たちのやることは変わらない」と即受け入れた。
古豪、名門を背負う自覚が芽生えた責任で、投球スタイルも変わった。「言葉と行動が合致するようになりました。実戦でも長いイニングを見据えながら、仲間を信頼して打たせて取る。打者を見ながら強弱を使い分けられるようになったのが、昨秋の収穫」(小川監督)
準優勝した昨秋の東海大会では1回戦(対津西高)、準々決勝(誉高)を完封。センバツへの大一番となったいなべ総合高との準決勝では延長10回を1失点完投。静岡との決勝は5回1失点降板も、東海大会を通じて自責点はこれのみ。計33回で防御率0.27。奪三振もイニングを上回る35と圧倒した。試合終盤でも衰えない最速152キロが武器だが、場面によって力の抜きどころを覚えた。変化球はカーブ、スライダーのみも、ここ一番の場面では「お守りのような球種」と言うスプリットを携える。「戦後初の甲子園での優勝は、常に考えている目標です」

新チームが結成された昨年7月27日に主将就任。エースとしてのさらなる自覚が芽生え、昨秋は東海大会準優勝と結果にもつながっている
県岐阜商高は甲子園で過去に春3度、夏1度を制すも、最後の優勝は1940年春。高橋は古豪復活の切り札として高い期待を受け、ドラフト1位候補としても、スカウトが目を光らせる。
昨秋の県大会後にはリフレッシュを兼ねて、藤田副部長の長男が在籍する立大の試合を神宮で観戦。高橋は「最終目標はプロですが、そこへ行くまでの過程はすべて考えている」と、東京六大学の視察はあくまで野球観の幅を広げる意味合いが強い。2年前の入学時から、藤田副部長にプロの夢を語っていた芯の強い男だ。センバツ不出場組を加えても「高校No.1」の呼び声高く、あるスカウトは「1位競合は確実」と徹底マークを宣言する。
春は高橋純平から──。2015年のスカウト戦線は3月21日のセンバツ開幕を機に、本格展開していく。
取材・文=岡本朋祐 写真=佐藤真一 PROFILE たかはし・じゅんぺい●1997年5月8日生まれ。岐阜県出身。183cm76�圈1ε蟇β如G瀘咯�2年時から梅林スポーツ少年団で野球を始め、梅林中時代は揖斐パワーズ(現揖斐本巣パワーボーイズ)でプレー。ボーイズの岐阜県選抜で準優勝。県岐阜商では1年春からベンチ入りし、同秋からエース。昨夏は県大会4強、主将となった同秋は県大会準優勝。東海大会では4試合33 イニングで自責点1、35 奪三振で準優勝。真っすぐの最速は東海大会1回戦と準決勝で計測した152キロ。変化球はカーブ、スライダー、スプリット。