
巨人時代、通算332本塁打を放ち、ホームランバッターとしての地位を築き上げた松井
巨人、そしてヤンキースと日本球界、メジャー・リーグの伝統球団で主軸を張った松井秀喜。日米通算507本塁打をマークしたが、その価値は数字以上のものがある。日本球界が生んだ最強スラッガーとも言えるゴジラは、果たしてバッティングに関して、どのような境地に達したのだろうか――。 文=鷲田康(スポーツジャーナリスト) 写真=BBM 140キロでも130キロで見る感覚
バットのヘッドが指し示すポイントに向かって、空気を裂くスイングが繰り返される。スイングをしているのは巨人時代の若き松井秀喜。そしてバットのヘッドで目標を示しながらインパクト直前に、ヘッドを引く作業を繰り返すのが、巨人の監督だった
長嶋茂雄(現巨人軍終身名誉監督)である。
「一番、集中力を求められていたのは(長嶋)監督だったと思います。僕は監督が示すミートポイントに、ただバットを最短で振るだけですから。本当に当たる寸前に監督は、バットを引く。もし当たったらケガする可能性もありますし……」
あるとき実際に松井のバットが、長嶋監督の構えたヘッドに当たったことがあった。大音響とともに、監督のバットが吹っ飛び壁に激突した。幸い二人に何事もなかったが、一つ間違えば大ケガしてもおかしくないアクシデントだったという。
「そうやって集中力を研ぎ澄ました上で、僕のスイングを見て、音を聞かなければならなかったわけですからね。監督の集中力は並大抵のものではなかったと思います」
松井の打撃を築き上げる土台となった、長嶋監督とのマンツーマンによる素振り。この鍛錬は入団1年目から始まり、2年目にはそれこそ休む日なく、毎日繰り返されるルーティンとなっていった。
「最初のうちは言われたことをやるだけでしたから、指導の意図だとか、すべてを理解できていなかったように思います」
ただ、長嶋監督に言われるがまま、バットを振り続けていくうちに・・・
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