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清宮幸太郎 マンモスを堪能したスーパー1年生スラッガー

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取材・文=岡本朋祐 写真=田中慎一郎、牛島寿人、高原由佳

1年夏の活躍を敵将は冷静に分析


 甲子園開幕2日前の8月4日、大阪市内で稲門倶楽部(早稲田大学野球部OB会)主催の激励会が行われた。毎年、恒例の行事で、甲子園出場へ導いた仙台育英・佐々木順一朗監督、早実・和泉実監督、九州国際大付・楠城徹監督が招待。野村徹氏(元早大監督)、岡田彰布氏(元オリックス監督)らが出席し、大会を前にして励ましのメッセージを送った。

 祝宴の中で話題の中心となったのは、「清宮幸太郎」だったという。夏の甲子園出場を逃していた早実と仙台育英はちょうど1年前、新チーム結成直後に練習試合を組んでいた。結果は仙台育英が5対0で勝利。早実・和泉監督は「まったく遊ばれた(苦笑)」と、同秋に東北大会と神宮大会を制する実力の差を痛感した。1年後、甲子園準決勝での対戦が実現。佐々木監督は早実を警戒していた。

「昨年8月、清宮君はいなかった。(今年4月に入学して)清宮君が根こそぎ(チームを)変えた。こんなに相乗効果があるとは……。きれいにバットが出る。怖さも何も知らない。『打てなかったどうしよう』というのもなく、自由なバッティングをしている。ウチもみんな、そうしてくれれば良いんですが……ね(苦笑)」

 1回戦で対戦した今治西・大野康哉監督も、同様の意見であった。

「これだけ騒がれた中で、これだけの結果を残している。清宮君自身も素晴らしいですが、力を発揮させている和泉監督、上級生を含めたチーム力が素晴らしいものがある」

宿舎変更の不運も聖地・甲子園を堪能


 早実の1年生が伸び伸びプレーできる環境にあるのは、今に始まったことではない。1980年夏、1年生エース投手として名門を準優勝へ導いた荒木大輔氏。厳しい上下関係、精神野球が色濃く残っていた時代背景の中でも、先輩と後輩との間に、風通しの良い空気が流れていたという。

 荒木氏を取り巻く環境が一変したのは同夏、優勝候補・北陽(大阪)との1回戦で完封して以降。端正なマスクから女性ファン注目の的となり“大ちゃんブーム”が到来。宿舎は甲子園から徒歩圏内であったが、行き帰りの移動も、バスを使わないと非常に危険な状況となっていた。

「甲子園駅の近くに、おいしいドーナツ屋があったんですが、1回戦以降、外出できなくなった。些細なことかもしれませんが、16歳の唯一の楽しみが、奪われてしまったんです」

 当初、清宮も甲子園から徒歩3分のホテルに宿泊する予定だった。同ホテルは旅館タイプで西東京代表校の常宿。2011年夏に全国制覇を遂げた日大三のエース・吉永健太朗(早大4年)が、思い出話を語ったことがある。

「昼間に時間があれば、外野席で甲子園を観戦し、部屋でテレビを見ていても、(電波の関係で)少しずれて『ワーッ』という歓声が聞こえてくる。夜は球場周辺をランニングします。四六時中、甲子園のムードを味わうことができて楽しかったです」

 注目選手ゆえの宿命だが・・・

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