今季のヤクルトの優勝を語る上で、この男の名前は欠かすことができないだろう。山田哲人。10月4日の最終戦を終え、ついにトリプルスリー達成を決めた。開幕から全試合フル出場し、攻守走でチームをけん引してきた。順風満帆とはいかなかったシーズン。それでも上々の成績を収めた山田の底知れぬパワーと強い意志とは。 取材・構成=阿部ちはる、写真=BBM 
10月2日の阪神戦[神宮]の11回裏、サヨナラ打を放った雄平の下へ駆け寄る
守備・走塁の成長が相手への脅威に
神宮球場に14年ぶりの歓喜が訪れた。14年前は9歳だった山田哲人がその輪の中心にいた。
優勝までの成績は180安打、37本塁打、98打点、34盗塁、79四球、打率.328と驚異的な数字をマークした。打撃部門のほとんどの項目でリーグトップクラスの成績を収め、
川端慎吾、
畠山和洋らとともにリーグ最強打線を築いた。もともと選球眼は良かったが、その存在が相手チームの脅威となり四球数は四番・畠山の61をはるかに上回った。
8月22日には30本塁打に到達すると、9月6日には30盗塁もクリア。プロ野球史上9人目のトリプルスリー達成をこの時点でほぼ確定させた。
山田は13年の交流戦以降、二塁のポジションを奪うと、翌14年は開幕からそのポジションを不動のものにした。そして日本人右打者最多の193安打を放つなど、一躍その名を全国のプロ野球ファンに知らしめた。そして気がつけば、チームに欠かせない存在になっていた。
だが、昨年はまだ荒削りでもあった。「足には自信がある」と30盗塁を目標にしながらわずか15盗塁。守備でも13失策を犯した。自身のミスが失点につながり、試合に敗れることも経験し、「守れないと勝てない」と痛感した。昨秋、今春のキャンプでは
三木肇コーチとのマンツーマンの特訓で守備力を磨いた。シーズンが始まっても試合前の練習時はもちろん、試合後にも三木コーチと“反省会”をする場面が多く見られた。今季前半、守備中に見せていた不安な表情はいつしか消え、難しい打球も正確に処理できるようになっていた。三木コーチは「一緒にやってきたことを意識して取り組めている」と山田の成長に目を細める。
さらに走塁への意識も高めた。そのスピードを生かした盗塁は昨季の倍以上。帰塁のレベルアップを図ることでリードを大きく取ることを可能にし、より成功率を上げた。だが、それだけではない・・・
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