週刊ベースボールONLINE

2016ドラフト特集 第1弾
センバツ注目逸材 大阪桐蔭・高山優希 人生を変えた“神宮の11球”

 

神宮大会準決勝(対高松商高)で自己最高150キロをマークし、一躍ドラフト候補リストに名を連ねた。もちろん球速だけが投手を測るバロメーターにはならないが、左腕で150キロをマークした高校球児はごくわずか。可能性を感じずにはいられない。
文=谷上史朗、写真=BBM

神宮大会準決勝。「全部勝負球でいってこい」


 昨秋、大阪大会で2試合、近畿大会で2試合、高山優希の投球を見ていた。センバツも経験済みの本格派左腕がエースとなってのボールに注目したが、その時点ではまさか、秋を終えてこの騒ぎになるとは思いもしなかった。

 まさに1日にして高山の評価、注目度、そして運命まで変わったのかもしれない。神宮大会の準決勝(対高松商高)。勝てば翌日の決勝で先発のため、当初登板予定はなかった。ところが試合がもつれ、1点差で8回を終えたとき、ベンチに残る投手は高山1人。ここで西谷浩一監督に「全部勝負球でいってこい」と送り出されると11球すべて帽子を飛ばしてのストレートを続けた。これが高山か……。躍動感十分の投げっぷりと力強いボールに驚かされた。

 近畿大会までの投球には歯がゆさがあった。1試合、100球以上を見ても高山に対する期待値からすれば、それに応える球はごく極わずか。石田寿也コーチも神宮大会の初戦(対木更津総合高)を例にこんな話をしていたものだ。

「あの試合も初回のストレートが128キロから始まって、最終回にその日最速の141キロ。試合が終わってから“もっと前半からいけよ”と言ったんですけど、なかなかいけない。それが高山でした」

 大阪大会準決勝の履正社高戦でもその日の最速144キロが最後の1球で出た。ピンチになれば力を入れるという最近流行のタイプともやや違うつかみどころのなさ。

 このあたりの理由を本人へ尋ねると「先発だとスタミナ面もあって自然と体が抑えてるのかもしれません」。もっともな答えにして、意識的ではないということだが、その点、高松商高戦は延長タイブレークの可能性はあったが9回の登板。しかも甲子園大会や甲子園を懸けた戦いでもない一戦。後先考えず投げ込める状況がそろっていた。そこへ先頭打者への初球で143キロ。今日は感覚がいい、と真っすぐを続けていくとあっさりその時点での最速145キロも更新し球速は上がり続けた。そして3人目の打者の初球で149キロ。これをバックネット裏スタンド上部の球速表示で確認すると(出せるなら150キロを出したい)と、もの静かな男が色気を持った。そして思いきり腕を振った次の1球。空振り三振を奪ったストレートが思惑どおりに大台を突破した。“150キロ”。その瞬間、高山を取り巻く世界が変わった。

神宮大会の高松商高との準決勝、9回にマウンドに上がると3人目の打者に投じた渾身の真っすぐが150キロを計時。神宮球場はどよめきに包まれた[写真=松田杏子]



 試合後には多数の報道陣に囲まれ、翌日のスポーツ新聞には「怪物」「ドラ1候補」の見出しが並んだ……。この種の環境一変は時に高校生の成長を妨げる怖さもあるが「はっちゃけたりすることもないです」と自らも語るように、実に落ち着いた性格の高山にその種の心配は無用。取材での“手堅い受け答え”にはいくら結果を残しても上を見続け「まだまだです」を口癖とした藤浪晋太郎(現阪神)とのやり取りを思い出させた。

 このあたりは高山が本来備えた資質に加えもう1つ、謙虚にさせる理由を思いつく。ライバル寺島成輝(履正社高)の存在だ。中学時代から大阪のボーイズ球界でプレーし、長身左腕として注目されてきた2人。ただ、当時を知る者は「寺島は別格だった」と口をそろえ、高山も「抜けた感じがあった」と振り返る。対戦は中学3年春の代表決定戦1度のみでともに7回1失点でリーグの規定により交代。互角の結果ではあったが高山の中には歴然とした差が印象として残った。

「スピードだけ見たらそんなに変わらなかったとしても向こうは軽々投げていて、ボールもコースに来る。それにマウンドで余裕があって、見た人はみんな(やっぱり寺島は違う)と思ったはずです」

 履正社高、大阪桐蔭高と別れた高校生活でも高山の中には常に寺島の姿がある。昨秋は大阪大会準決勝で投げ合い、2対1で勝利したが「負けない気持ちはあるけどまだまだ。最後の夏には肩を並べるくらいまでいきたい」。何とも謙虚な高山らしい言葉だと思ったが、すぐさま加えてきた。

「真っすぐは自分も磨いてきましたから。そこは寺島にも負けないという気持が出てきました。ただ、今回の150キロは9回だけ全力でいっての150キロ。来年(16年)はこのマックスにアベレージを近づけて質ももっと上げていきたい」

 来たるべき春の舞台から勝負の夏、そして運命の秋へ。高山優希の物語は“神宮の11球”からどう広がっていくのだろうか。

PROFILE
たかやま・ゆうき●1998年5月17日生まれ。大阪府出身。180cm70kg。左投左打。城東小時代、森之宮キャッスルで野球を始め、城陽中では硬式の大阪東ボーイズに所属。3年夏にはボーイズ、ヤングの選抜メンバーで構成のNOMOジャパンでアメリカ遠征も経験。大阪桐蔭高では1年秋からベンチ入り、昨年のセンバツで甲子園のマウンドを経験。エースとなった秋は主戦で近畿大会優勝。神宮大会準決勝で150キロを記録大きな注目を集めた。変化球は最遅90キロ台のカーブ、自信のスプリット、スライダー。憧れの投手は阪神・藤浪晋太郎。
特集記事

特集記事

著名選手から知る人ぞ知る選手まで多様なラインナップでお届けするインビューや対談、掘り下げ記事。

関連情報

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング