昨季に比べれば、やや成績は落ちたものの、2年連続トリプルスリー達成という偉業を成し遂げた。プロ野球では誰もなしえなかったその快挙になぜ山田哲人はたどり着くことができたのだろうか。打撃スタイルを変えていないため、細かく見ても昨季と変わらない数字のほうが多い。だがその中にも、山田の進化を見つけることができた。 
7月10日に史上277人目となる100号を放った山田。23歳11カ月での到達は球団最年少記録だった
低めの打率アップと選球眼の良さが際立った
プロ野球では誰もなしえなかった2年連続のトリプルスリーを達成した
ヤクルトの山田哲人だったが、昨年に比べ、成績では下がる数字のほうが多かった(2015年は打率.329、本塁打38、盗塁34。16年は.304、本塁打38、盗塁30)。その要因としては、ケガによる10試合の欠場、前後の打者の故障離脱や昨季の活躍により相手からのマークが厳しくなった、などが挙げられる。
ではなぜ快挙を達成できたのか。進化した部分はどこだったのかを打撃を中心にひも解いていきたい。

インコース、アウトコースという大きな枠で見てみると、昨年と今年では攻められ方に大きな差はなかった

全体的に見ると比率は変わっていないが、インコース高め(表の右上)とアウトコース低め(表の左下)では打数と打率が大きく変わっている。※数字は球種、コースが判別できた投球に限ります。そのため実際の打数とは多少異なっています。
まず、円グラフを見ると分かるように内外角の攻められ方に大きな変化はなかった。しかし表1、表2からも分かるようにより厳しいコースへの配球は増えた。また昨年は得意だったインコース高めが今年は安打にできず、全体的に内角の球を打つのに苦しんだと言える。
その一方で改善したのが低めの打率だった。特に低めのストライクゾーンは高打率をマーク。さらにアウトコースへのあきらかなボール球には手を出さなくなったことが見受けられ、しっかりと球を見極め、ストライクゾーンで勝負していたことが分かる。実際にそれは四球数増という結果にもつながっている。
昨季81だった四球数が今季は97。出場試合数が減ったにもかかわらずリーグトップの数字を誇っていた。
外角低めは昨年も苦手としたコースだが、際どいコースの見極めもしっかりとできていたからこそ、打率の低下を最小限にとどめることができたと言えるだろう。
柔軟な適応力が快挙へとつながった

5月31日の日本ハム戦[札幌ドーム]で本塁打を放ち、6年目にして11球団のすべてから一発を放った
今年は昨年に比べ右方向への打球も減った。右翼、右中間への打球が昨季は35本だったが、今年は13本だ。山田はその理由を「それ(引っ張りの意識)でヒットを打てているからです。余計なことを考えたり、右方向を狙っていたらそれで崩れるかもしれないので」と説明。昨季はグラウンドをすべて使い、右方向も意識することで安打数を増やそうと考えていたが、今年はそうではなかった。そこが山田の適応力とも言える。
結果を残したからといって、過信することはない。調子が良ければ維持をし、逆に結果が残らなければ、一度フラットな状態に戻すことができる。謙虚に努力を続けた結果が今年の成績だった。
また
真中満監督は「調子の浮き沈みは誰にでもある。それがシーズン終盤に来たことも大きかった」とトリプルスリー達成の要因の一つに調子の波が少なかったことを挙げた。今年は春先から調子がよく、昨年は4月を終えて2本だった本塁打を8本に増やした。打率も.269から.340。ところが9月は本塁打数こそ4→5としたが、打率は.347→.176で盗塁数も8→1だ。自身も今シーズン前に、昨季は調子の波が激しかったので、波を減らしたい」と語っていただけに、それが実行できたことも快挙達成に大きく関わっていたと言える。「チームとしては優勝。個人としては3年連続トリプルスリーを目標にやっていきたい」と来季へ向け新たなスタートを切った山田。
杉村繁打撃コーチは「内角への対応をこのオフからやっていく」と話し、さらなるレベルアップを図るつもりだ。さらに今季は死球による離脱があっただけに「強靭な体を作れば、離脱はなかったかもしれない。能力的には50本塁打も無理ではないのだからウエート・トレーニングを増やしていくことが必要だね」とも話し、さらなる高みを求めた。
数字を見れば下がったように見えるが、進化がなければ2年連続のトリプルスリー達成は不可能だった。さらなる快挙に向け、山田の進化は終わらない。
【はみ出し神ってた】山田は四番向き!?
昨季に比べ成績はやや落ちたが、四番としては素晴らしい結果を残した。今季は36試合で四番に座ったが、そのときの打率はなんと.347で出塁率は.475と神りつつあったのだ。また昨季はわずか5試合ではあったが打率.294で出塁率が.400なのだから、「打順はあまり意識しません」という山田でも、四番を務めるときには気合いが入っていたのかもしれない。そしてその気合いが空回りすることもない。実は四番が適正打順なのかも……。