球団史にその名を刻もうとしている若き遊撃手がいる。好調・楽天で「一番・遊撃」としてチームをけん引している2年目の茂木栄五郎がその一人だ。プロに入団した昨年から遊撃が主戦場となった男が日々奮闘している。 
もぎ・えいごろう●1994.2.14生=23歳/171cm75kg/右左/桐蔭学園高-早大-楽天16※ショート歴2年
ルーキーイヤーだった昨季、ショートでの開幕スタメンを勝ち取った茂木栄五郎(楽天)。故障離脱時期以外はショートとして試合に出続けたが、失策数は117試合で19個。これは12球団ワーストの数字だった。桐蔭学園高、早大では主戦場がサード。プロ入り後、ショートにチャレンジしたため、悪戦苦闘の毎日だったと茂木は振り返る。
「僕は打撃を評価していただいてプロに入れたと思っているので、守備では苦労すると思っていました」
捕って投げる。それだけでも骨を折ったという。加えて、「バッテリーとの連係を取ったり、セカンドの藤田(
藤田一也)さんとの連係を取ったり(今季からは
銀次とコンビを組むことも)。外野との連係役でもありますから」。
シーズン当初はエラーをして、それを引きずったまま打席に入ることもあり、バッティングに影響を及ぼしたこともあったと打ち明ける。それでも、経験を積むたびに頭の中を整理できるようになっていく。
「まずはしっかり捕ること。捕って投げると考えると、どうしても捕球がおろそかになってしまいますから」
グラブの形状はサードを守っていたころから変わらない。プロ入りして初めての春季キャンプでは、大学時代のグラブと新しいものを併用。そしてシーズンに入ってから新しいグラブに切り替えた。大きさはサードにしては小ぶりだというが、結果的にショートとしての標準サイズになったという。ポケットは「深過ぎず、浅過ぎず」。他人のグラブにも目移りはしない。守備の技術は道具に頼ることなく、自身が高めるものというポリシーがあるからだ。
ショートを任された際、お手本として頭に浮かんだのは「もう、一人しかいません。
松井稼頭央さんです」と語る。自身の記憶に刻まれているのは、
西武時代に右へ左へと躍動する「背番号7」だった。身近に尊敬できるお手本がいることほど心強いことはない。1年目は恐れ多くてなかなかアドバイスを仰ぐことはできなかったが、「うまくなれるなら」と覚悟を決め、貪欲に技術を吸収していくつもりだという。
50試合を消化した時点で失策数は「4」。昨年の同時期は「5」であり、その成長度はまだ、数字では計れない。ただし、リーグ屈指の守備力を誇る
今宮健太(
ソフトバンク)が「3」。守備機会は茂木が少ないものの、肉薄する数字を残している。
打撃での貢献は言うまでもない。今季から一番打者に定着すると、5月28日に楽天の生え抜き選手初となる2ケタ本塁打を達成。抜群の飛距離を誇るペゲーロと“恐怖の一、二番コンビ”を形成している。これも、遊撃守備に慣れ、良い流れで打席に入れていることも要因の一つと言えるだろう。シーズンを終えたときの失策数がいくつにおさえられるのか。大いに注目したい。
VOICE 真喜志康永[内野守備走塁コーチ]の視点
「トップクラスのレベルまで来ている。去年は戸惑いがあったけれど、今年は打球の速さにも慣れてきて、対応できるようになってきたし、余裕が感じられるようになってきた。状況の中で2つ、3つシミュレーションしながら守らないとあわててしまうけど、今年はそれができている。ワンステップで投げないとショートは務まらないから、それを去年のキャンプからずっと練習してきた。あとは確率を上げることでしょう。エラーはやってしまうもので、ピッチャーに『あいつがエラーしたらしようがない』と思われるような存在になってほしい」
編集部選!楽天歴代ショートBEST 5
1.松井稼頭央(2011年〜)
2.茂木栄五郎(2016年〜)
3.
渡辺直人(2007〜10年)
4.
後藤光尊(2014〜16年)
5.
西田哲朗(2010年〜)
やはり1位は松井稼頭央だろう。遊撃手としての全盛期は西武時代だが、5年間のメジャー生活を経て帰国すると、11年に楽天へ加入。13年にはキャプテンとして球団初のリーグ優勝、日本一に貢献した。15年からは外野手登録となり、NPB通算2000安打を達成。41歳で迎えた今季、同200本塁打もマークしている。2位は今後の伸びしろを加味して2年目の茂木栄五郎とした。1年目の昨季から遊撃の定位置を獲得し、今季は打撃力がアップ。5月時点で早くも2ケタ本塁打をマークするなど、強打者としての一面も見せる。3位は渡辺直人。創設3年目に入団し、打撃面で特筆すべき数字はないが、守備での安定感はピカイチだった。09年から2年連続で遊撃手として2年連続で守備率がリーグ1位。チームメート、ファンに愛され、トレードで横浜へ移籍する際には惜しむ声が相次いだ。西田哲朗は高卒8年目の25歳。正遊撃手候補と期待されるも、一軍に定着できていない。