2007年に北信越の4球団から誕生し、現在10球団まで拡大したBCリーグ。昨秋のドラフトでは育成2選手を含む6選手をNPBに送り込み注目される。ここでは“もう一つのプロ野球”、「独立リーグ」のお金事情をリポートする。 取材・文=岡田浩人 
2017年リーグ優勝を果たした信濃の胴上げ
4球団から10球団へ11年間で大きく拡大
日本で2番目となる独立リーグ「ルートインBCリーグ(以下、BCL)」が誕生したのは2007年4月のこと。「プロ野球がない地域に地元球団を作ることで地域活性化を図る」(村山哲二BCL代表)という理念の下、当初は新潟、信濃(長野)、富山、石川の北信越4球団でスタート。翌08年には群馬、福井、15年には福島、武蔵(埼玉)がリーグに参入。昨年17年には栃木、滋賀が加わり、現在は10球団……南東北から関西までの広範囲にまたがっている。
リーグ創設から1つの球団も消滅せず、順調にエリアを拡大しているように見えるが、リーグと球団の経営は決して楽なものではない。ただ、独立リーグならではの制度や工夫で、徐々に地域に根を広げながら、NPBを目指す選手や地域のファンに、野球の場を提供し続けている。
BCLではリーグ、そして10球団がそれぞれ独立採算で経営を行っている。
1球団当たりの年間予算規模は平均すると約1億3000万円(図A)。これは60億円とも100億円超とも言われるNPBの球団の50〜100分の1の規模である。
球団の主な収入源は、スポンサー収入が54%と半分以上で、後援会(ファンクラブ)やチケット収入が3割弱を占める。チケットの値段は1試合あたり大人1000〜1500円が相場である。また、独立リーグならではの収入源となっているのが地元での「野球教室」。選手や監督・コーチが、試合のない平日やオフに直接指導をしてくれる。NPB経験者が直接指導してくれるとあって、徐々に人気を広げている。
支出面(図A)で大きなものが人件費で約半分を占めている。選手や監督・コーチの給与について、BCLは給与総額の上限を決める「サラリーキャップ制」を採用。選手は約25人で、シーズン中の半年間は月額10〜40万円の給与が支払われる。多くはシーズンがオフとなる半年間、地元のスポンサー企業などでアルバイトを行い、生計を立てている。また監督・コーチは概ね1球団3人(監督、投手コーチ、野手コーチ)として総額が約1600万円となっている。
昨秋のNPBドラフト会議で、石川から3人の投手が本指名を受け、リーグも球団も大いに沸いた。そして、同時に“臨時収入”も入った。BCLは選手がNPBに入団した際、契約金と初年度の年俸の20%、2年目の年俸の10%を、リーグと所属していた球団に支払う契約を結んでいる。3選手の入団でリーグと石川球団には今年度計1460万円(推定)の収入が入る。球団にとっては年間収入の約1割にあたる。多くの選手をNPBに送り出すことは球団経営を大きく左右すると言える。
BCLの観客動員はどうか。
創設年の07年は1試合平均1778人だったが、昨季は606人と3分の1に減少。観客数増は大きな課題となっている。
そこでリーグが現在、力を入れているのがNPBとの交流戦。
巨人三軍をはじめ、ファームチームとの交流戦は昨季、1試合平均1347人の観客を集め、集客力のあるコンテンツであることを証明した。
またレギュラーシーズン終了後の9月末から10月にはBCL選抜チームを組み、ファームとの交流戦を行い、ドラフト直前にスカウト前での“腕試し”を行った。昨秋ドラフトで育成含む6人がNPB行きを手にした背景には、こうした関係強化が実を結んだと言える。

試合では選手がファンをお出迎えするのも独立リーグならでは
今後の展望と課題。軸となるのは地域密着
現在、10球団が所属するBCLに来春、茨城県民球団「茨城アストロプラネッツ」が参入予定となっている。県内のウエブ制作会社が母体となり、設立準備室を立ち上げて球団創設の準備を進めている。このほかにも「複数の地域から参入希望や問い合わせがある」(村山代表)という状況で、今後もさらなる球団拡張が見込まれる。
一方で、エリアの拡大から新たな課題も出てきた。設立当初の4球団時には最大移動距離が300キロ程度だったため、選手は日帰りのバス移動で試合を行った。しかし現在は東の福島から西の滋賀まで、最大移動距離は約700キロ。移動や宿泊に伴う経費がかさみ、球団経営を圧迫するようになってきた。このためリーグでは16年までは東西異なる地区同士の交流戦を4試合(ホーム2、ビジター2)開催してきたが、昨季17年は2試合に減らした。
また各球団間の観客数に格差が生じていることも課題となっている。17年の平均観客数はトップの新潟(1046人)と最下位の武蔵(329人)の差は3倍超となった(図B)。村山代表は「NPBとの交流戦など、観客に楽しんでもらう環境をリーグが主導してどう作っていくかが大きな課題」と語る。
茨城の参入で計11球団となり、あと1球団の参入で「大きな目標だったNPBと同じ12球団となる」(村山代表)。そうなると現在の東西2地区制から4球団3地区制への移行、プレーオフでのワイルドカードの導入など、野球ファンにNPBとは異なる「プロ野球」の楽しみ方を提供できる可能性が出てくる。
BCLは1月末、リーグ事務所を新潟市から東京都内に移す。球団数の増加で、リーグ内の会議やNPBとの調整、スポンサー営業など、東京での仕事量が増えたためである。創設12年目となる今シーズンは、さらに新たな一歩を踏み出す。
村山代表は「NPBへ多くの選手を送り出している点で、『育成ビジネス』としてはうまくいっている」と振り返る一方で、「観客数の伸び悩みなど、目指していた『地域活性化ビジネス』としてはまだ課題が多い。『地域のためになるかどうか』という軸足をぶらすことなく今後も取り組んでいきたい」と話している。
これまで“プロ野球のなかった地域”に次々誕生している独立リーグの球団が、地方で果たす役割を模索、そして挑戦する日々は続いていく。

富山の新入団選手会見はファンを集めて行われた