大手メーカーにはない味──。現在、これまでちょっと聞き慣れなかった、新進気鋭メーカーが台頭し始めている。今回は4つのメーカーに訪問し、グラブの新潮流とプロも愛用するその魅力とこだわりをご紹介していこう。まずは、DeNA・筒香嘉智らも愛用するアイピーセレクトのグラブ。「グラブ=捕球」の概念を持ち合わせず生み出された逸品だ。 取材・文=鶴田成秀 
アイピーセレクト・鈴木一平氏
幼少期にノートに描いた“落書き”が根底にある。「想像したことを何となく描くのが好きだったんですよ」。照れくさそうに話すのは、アイピーセレクトのトータルプロデュースとデザイナーを務める鈴木一平氏。高校卒業後も社会人野球でプレーを続け、現役引退後に実家が営むスポーツ用品店の後を継いだ。販売、営業を行う中で複数メーカーの工場へ足を運ぶうちに、物作りへの思いが燃え上がり、準備期間を重ねて2009年に立ち上げたのが『アイピーセレクト』だ。
鈴木氏がグラブ作りで意識するのが「プレーヤーの先を行く」こと。そもそも鈴木氏に「グラブ=捕球」の概念はない。捕球までのチャージや送球姿勢に移る際にもグラブは身体の一部となるだけに“身体の動きに即したグラブ”が、プレーを向上させると考える。「グラブは投げるための道具でもあり、捕球位置に動くための道具でもあるんです」。だからこそ、同社のグラブを愛用するDeNA・筒香嘉智、
ヤクルト・
大引啓次らに求める意見も「どんなプレーをしたいのか」。自身も身体の仕組みや動きを学び、グラブ作りにつなげるからこそ「求める動きに応じてグラブの形状は変わる。だから『こういうグラブを作りたい』というのは先の話」と言い切れる。

DeNA・筒香嘉智
それだけに欠かさないのが選手との対話だ。「アイピーセレクトのグラブは選手と私、私と職人の間で作る『間創』であり、互いの感覚を形にする『感創』のグラブなんです」。鈴木氏が行う型作りには、そんな思いが表れる。型、革の硬軟伸縮などを加味した上でグラブと“交信”し、柔らかくなり過ぎないよう、プレーヤーが使用しながらパフォーマンスを最大限引き出せるようにグラブに礎をつくってく『アクアフィット』を施している。
生産はアイピーセレクトのコンセプトを熟知した職人が一つひとつ丁ねいに作り上げる。それだけに大量生産はできず、品切れも続くが、それは選手のために、まだ見ぬ形なき物も同時に追求しているからこそ。「作り手が形を決めつけては、その先は生まれない」。幼少期に描いた“落書き”のように──。形なき物を今も追求するからこそ、現場の選手、職人との対話は欠かさず、身体の動きに応じたグラブを生み出している。

日本生命・十河監督との“間創”にてつくり出された十河モデル

薬指部分にリングを付けることで、より手とグラブの一体感を生んでいる[リング画像下]/Ip.1050-18(内野手用-定番)57
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