2020年の顔ぶれが出そろったところで、解説者の視点から新人王レースの行方と有力候補を探っていく。パ・リーグを里崎智也氏が、そしてセ・リーグを広澤克実氏が徹底分析。本誌予想にも異論あり!? 【パ・リーグ編】里崎智也「平良海馬の一択! ほかにいる?」

里崎氏のイチオシは平良。昨年デビューの豪腕だ
欠かせないインパクト パ・リーグは高卒2年目のセットアッパー・
平良海馬(
西武)で決まりでしょう。逆に聞きたいんですけど、ほかにいますか? 9月17日現在、33試合に登板して16ホールドを挙げています。主に勝ちパターンの試合終盤に登場し、
増田達至につなぐ“勝利の方程式”の一角として重要な役割を担っています。パ・リーグのホールド数では「29」で独走する
モイネロ(
ソフトバンク)は別格として、
ハーマン(
ロッテ、21ホールド)、
宮西尚生(
日本ハム、19ホールド)らに続く数字で、タイトル争いに絡んでいることも評価ポイントです。
新人王のタイトルを手にするためには、例えば打者なら打率3割、投手なら2ケタ勝利、そして救援投手なら“勝利の方程式”と、高い水準が求められます。それに加えて平良は自己最速を更新する160キロを出したり、開幕から10試合連続の“ノーヒットノーラン”を記録するなど、数字上のインパクトは絶大。記者投票で決するこのタイトル獲得のカギはここにあります。ただし、成績が尻すぼみになってしまえば、その記憶は薄れてしまう。最後まで好調を持続させることが重要です。
正直、対抗馬は見当たらない状況です。可能性があるとすれば
小深田大翔(
楽天)ですかね。スピードが大きな武器となっています。ただ、このままレギュラーの座を守るだけでは物足りない。ここまでチームトップの11盗塁も、リーグでは8位に過ぎません。今後、盗塁王のタイトルを獲得するような快進撃を見せて、初めて新人王の有力候補として浮上するでしょう。
高卒3年目の
安田尚憲(ロッテ)も有力候補と言われているようですが、私はちょっとうなずけません。ソフトバンクと優勝争いを演じているチームの四番打者と言えば聞こえはいいですが、打率2割そこそこではやはり決め手不足。昨年のセ・リーグ新人王の
村上宗隆(
ヤクルト)も同様の打率でしたが、彼に関しては36本塁打、96打点という数字に説得力がありました。それと比較しても、周囲を納得させる数字がないと苦しいですね。前述しましたが、やはり打者ならタイトル争いをするほどの高水準の成績が欠かせません。
ほかでは社会人出身のドラフト1位左腕・
河野竜生(日本ハム)がすでにプロ初勝利を挙げています。また、6月に育成から支配下に昇格した
和田康士朗(ロッテ)もその脚力で注目を集めていますが、彼らが新人王候補かといえば、まだまだ経験が足りません。シーズンはすでに折り返しており、終盤戦へと向かっています。成績は積み重ねなので、短期間で評価を逆転させるのは至難の業。だからこそ、平良の優位は簡単には揺るがないはずです。ただ、最終的には記者投票。もしかしたら、あっと驚くようなどんでん返しがあるかもしれませんが……。
PROFILE さとざき・ともや●1999年ドラフト2位でロッテ入団。2年目の2000年に一軍出場を果たすと、捕手として05年の日本一、06年のWBC優勝に貢献。10年にもリーグ3位からの下克上日本一をけん引した。14年に現役引退
【セ・リーグ編】広澤克実「心情的には森下暢仁。でも……」

広澤氏の予想する戸郷(写真)と森下の一騎討ちの結末はいかに
スカウト&育成の力 私は昨年まで明大野球部の特別コーチをやっていたこともあり、
森下暢仁(
広島)のことは大学1年生のころからよく知っています。彼の言動や学生、主将としての人間性、皆さんがよく言うルックス(笑)と、すべてを兼ね備えた男なので、私個人の心情としては彼に新人王を獲ってもらいたいところです。ただ……現実的に考えると、
巨人がリーグ優勝を果たし、
戸郷翔征が2ケタ勝利などの好結果を残せば、やはり戸郷が有力なのかなと思います。
森下の特徴と言えば、大きなカーブです。今のプロ野球では速い変化球が全盛ですので、彼のカーブはまったく違ったタイミングになります。あの遅い変化球をうまく打てる選手はなかなかいない。打者にとって邪魔になるボールで、それに加えて制球力、球威もあるので、これらの要素が6勝という成績につながっていると思います。広島打線がかつてのように活発ならば、もっと良い成績を残せていたかもしれません。

森下暢仁
今の広島は
大瀬良大地やK.ジョンソンなど、柱となるべき投手が故障や不調で苦しみ、チームの成績も低迷しています。1年目のルーキー右腕が、今ではエース格ですからね。不調のチームの希望の光となっているという意味で評価できます。
一方の戸郷。巨人には
菅野智之という絶対的な存在がいますが、彼がいなかったらどうなっていたのだろうと思えるほど、その貢献度は高いです。エースの背中を追いかけるように勝ち星を伸ばし、菅野の開幕11勝は別次元として、チーム2位の7勝で続いています。負け数も3と少なく、勝率.700、そして防御率2.37は立派な数字ですね。自主トレでは、巨人からメジャーへ移籍した
山口俊(現ブルージェイズ)から直球やフォークを学んだそうですが、まさにその穴を埋める活躍ぶりです。
それにしても、巨人のスカウト力と育成力には脱帽です。高卒2年目の戸郷はドラフト6位。そして今やブルペン陣のエースとも呼べる存在に成長した大卒5年目左腕の
中川皓太は7位入団でしたから。下位指名選手であっても、スカウト活動を通じてその能力を見極め、なおかつ入団してからしっかりと育てている。昨季終盤の優勝争いの最中に戸郷を一軍デビューさせ、CS、そして日本シリーズでも登板機会を与えました。そこでのほろ苦い経験があったからこそ、2年目の飛躍につながっているのでしょう。森下はドラフト1位の即戦力ですから、この活躍ぶりはいわば想定内。ですが戸郷は、下位入団ながら“ドラ1クラス”の結果を残していると言えます。
とにかくセ・リーグの新人王争いはこの2投手に尽きます。私もあまり私情をはさむことなく(笑)、このハイレベルな争いを注意深く見守っていきたいと思います。
PROFILE ひろさわ・かつみ●1985年ドラフト1位でヤクルトに入団。88年に30本塁打をマークすると、不動の四番に。92年にリーグ優勝、93年には日本一。95年に巨人へFA移籍し、2000年からは
阪神でプレー。03年に現役引退